「不安だ」と口にする人が、真っ先にすべきこと
今は、不安の時代であると述べました。もちろん、その不安は人によって違います。極めて深刻な不安を抱えている方がいれば、そうでない方もいます。
アドラーは「攻撃的不安」という言い方をしています。「攻撃的」というのは、「不安でどうしよう、どうしよう」と思っている人の多くが、その不安に攻撃性が隠されているということです。
覚えておいていただきたいのは、不安は助けを求める形で機能するという点です。
例えば、不安な人は様々な不安を口にします。しかし、悲観的な人が口にする不安というのは、楽観的な人から見ると、「なぜそんなに悲観的なことばかり口にするのだろう」と思うものもあります。
相手は不安を口にすることで、助けを求めているのだということが分かっていないと理解できません。それこそ「どうして、あんな不安ばかり言っているのだ」という話になってしまいます。
ですから、不安は、「助けを求めている」ことだと理解してください。
私はキリスト教の勉強はしていませんが、使徒のパウロは「前向きなこと、楽しいことを考えよう」と言っています。二千年以上前の紀元前の頃から、「前向きなことを考えよう」「楽しいことを考えよう」と言っています。しかし、人間は、千年たっても二千年たっても、それを実現できていないのですが…。
人は助けを求めています。だから、不安な人も「不安だ、不安だ」と言うだけではなくて、自分は助けを求めているのだと意識することが大切です。悩んでいる人の多くが助けを求めているのです。
【著者紹介】加藤諦三(かとう・たいぞう)
1938年、東京生まれ。東京大学教養学部教養学科を経て、同大学院社会学研究科修士課程を修了。1973年以来、度々、ハーヴァード大学研究員を務める。現在、早稲田大学名誉教授、日本精神衛生学会顧問、ニッポン放送系列ラジオ番組「テレフォン人生相談」は半世紀ものあいだレギュラーパーソナリティを務める。