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保護者の同意もない「お金と労働力」の行使...PTA会費のグレーな仕組み

大塚玲子(ジャーナリスト)

2021年11月16日 公開 2024年12月16日 更新

 

よく考えればおかしい「学校への寄付」

現状のPTAは学校への「寄付」と「お手伝い」、すなわち「お金」と「労働力」というリソースの提供をし過ぎ、という問題もあります。「それの、どこが問題なの?」と思った方もいるかもしれません。

現状、教職員も保護者も「PTAというのは学校にお金をあげて、お手伝いをする団体」と思っている人が大半ですし、実際、学校はそれで大いに助かってきたわけです。

「学校には本当にお金(公費)がないんです」と校長先生たちが嘆く通り、学校は国や自治体から、本当に少ない予算しかもらえていません。でも本来、学校に必要なモノや労働力は、公費という公的な予算=税金で賄う必要があります。

義務教育無償は憲法で定められていること。学校に必要なお金を保護者だけで賄えば、当然負担は重くなります。税金なら基本的に応能負担ですが、PTAはすべての家庭に「お金」と「労働力」を一律に課すため、余裕がない家庭ほど大きな負担を負います。

しかも、いまのような強制ベースでの「寄付」やお手伝いは、ますます問題です。自動強制加入のPTAで、つまり本人の同意なく集めた会費で学校に「寄付」をするのは、本当の意味での寄付とはいえません(そのためカギカッコ付きで「寄付」としています)。

この「割当寄付」は地方財政法※で、はっきりと禁じられているのです。会費からでなく、バザーや資源回収など、保護者の労働力提供によって得た収入から出すのであれば、割当寄付にはあたらないかもしれません。ただしこの場合も自治体への寄付採納など、正規の手続きをするのが妥当でしょう。

PTAは本当は「寄付」やお手伝いの代わりに、国や自治体、社会に対し「学校にしっかり予算をつけてくれ」と声をあげる必要があったのではないでしょうか。戦後75年も経つのに、いまだに「学校にはお金がないんです」「ではPTAが出します」と言い続けている状況は、さすがにどうかと思います。

PTAによる学校への「寄付」は、昔は現金を渡す形が多く、額も100万円を超えることがザラでしたが、戦後、繰り返し議会やマスコミで取り上げられてきたため、だいぶ減ってはきました。

しかし、それでもまだ数万~数十万円の現金を渡したり、「教育振興費」などの名目で、学校の備品を買ってあげる「寄付」は多く、100万円を超える例もまだ見かけます。たとえば、ある自治体の調査では「PTAからの受け入れ経費(平成30年度)」が100万円を超える小学校は約110校中4校ありました。

東京など一部の自治体は「寄付」をはっきりと禁じたため、会費からの寄付は少ないのですが(区にもよりますが)、その分バザーやベルマーク活動など、無償労働の換金による寄付に流れている傾向もあります。

さらに、地域や学校によっては「〇〇学校後援会」などPTAとは別の団体があり、そこでも「寄付」を集めていることもあります。本当の寄付(任意)なら問題ないのですが、残念ながらPTAと同様、「全員必ず払ってください」という割当寄付も見られます。

なお、学校がPTAのお金に頼りがちな原因は、公費の不足に加え、公費の「使い勝手の悪さ」にもあるようです。購入先が限定され、お金がおりるまでに時間がかかる、という問題も改善が求められます。

※【地方財政法第4条の5】国(中略)は地方公共団体又はその住民に対し、地方公共団体は他の地方公共団体又は住民に対し、直接であると間接であるとを問わず、寄附金(これに相当する物品等を含む)を割り当てて強制的に徴収(これに相当する行為を含む)するようなことをしてはならない。

 

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