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「朝のドア押し係を率先する駅長」に学ぶ“上司がやって見せる必要性”

2022年06月11日 公開

小宮一慶(経営コンサルタント)

上司が現場に立つ重要性

山本五十六の「やってみせ、言って聞かせて、させてみて、誉めてやらねば人は動かじ」という有名な言葉がある。経営コンサルタントの小宮一慶氏は、この「やってみせ」こそ重要で、部下育成の肝であると語る。優秀なリーダーが部下に見せるべき姿勢を紹介する。

※本稿は、小宮一慶(著)『経営が必ずうまくいく考え方』(PHP研究所)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

先頭に立つリーダーを部下は見ている

「指揮官先頭」ということを、私は経営者の皆さんに繰り返し伝えている。これは、戦前の海軍兵学校で厳しく教えられた心構えだ。

日露戦争で日本海海戦を指揮した東郷平八郎は、防護壁のある司令塔に入ってほしいという部下の要請を断り、砲弾が飛び交う中、旗艦三笠のブリッジに立ちつづけた。命がけの覚悟と理性とを併せ持つ優れたリーダーが、この戦闘に勝利をもたらした。

もちろん、会社は軍隊とは違う。しかし、大事な場面において、自ら先頭に立つ覚悟を持つことは、リーダーに欠かせない心得だ。

「指揮官先頭」を思うとき、いつも思いだす光景がある。20年以上前のある朝、私は羽田空港に向かっていた。当時の私はまだ若く、さほど財布に余裕もない。タクシーにも乗らず、山手線で、渋谷駅から品川駅方面に向かうことにした。

真冬の朝8時ころの渋谷駅の混雑はすさまじかった。中央階段を下りてすぐの場所は、あまりに人が多く、電車に乗ろうにも乗れない。1本見送り、次に乗るしかない...と思ったとき、ある人に目がとまった。

電車のドアごとに駅員が立ち、「押し係」をしているのだが、私の目の前のドアに立つその人の動きは、驚くばかりに美しかった。

閉まりかけるドアをまず両手で支え、乗客が身体や荷物を引ける数秒を確保する。そして、その後、ドアを両手で支えながらゆっくり閉めたあと、最後に自分の靴先をドアに挟み、乗客の衣類が狭まれないようにする。発車ベルが鳴っていよいよというときに、両手と靴とをゆっくり、丁寧に抜く。ドアが優しく閉まる。一連の動きに、目を奪われた。

この人は何者だろう、と思ってしげしげ見ると、帽子に金の線が2本入っている。名札には「駅長」とあった。日本有数のターミナル駅であるJR渋谷駅の駅長が、現場に出ている。それも、戦場にも等しいラッシュアワーのホームで、もっとも混雑したドアで、最高のパフォーマンスを披露している。そのことに深い感動を覚えた。

もっとも大変な時間帯に、もっとも厳しい場所で、リーダーが自ら現場で業務をこなす。その姿を見れば、部下もうかうかしていられない。しかも、どの駅員よりも駅長の動きが完璧で美しく、ホスピタリティにあふれている。部下は必然的に、それを目指すようになる。まさに率先垂範、指揮官先頭だ。

 

良い仕事を見せることから

また日本海軍の話になるが、山本五十六の有名な言葉、「やってみせ、言って聞かせて、させてみて、誉めてやらねば人は動かじ」もまさにこのことを言っている。

最初にすべきは「やってみせ」なのだ。良い仕事の何たるかを見せることが、1番の部下育成となる。人がついてこないリーダーは「言って聞かせて」から入る。

私も、経営者としてそうありたいと思う。コンサルティングの現場には、時々有望な若い部下を連れていき、お客さまとの対話の様子を見てもらい、学んでもらっている。

技術やコミュニケーションの手法のみならず、熱意やお客さまへの思い、気配りの仕方も吸収してもらえたら、と願っている。

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