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発達障害の線引きは曖昧? 「特性がある人」とギクシャクしないための向き合い方

佐藤恵美(精神保健福祉士/公認心理師/臨床発達心理士)

2022年11月15日 公開 2024年12月16日 更新

 

配慮を「特別なことにしない」

発達障害の特性を持つ人へは、まわりの人のさまざまなサポートや配慮が必要なことがおわかりいただけたかと思います。

ただ、特に忙しい仕事の現場では、上司をふくめ職場の人が「発達障害の人だけに特別な配慮をしなければいけないのか」「余計な手間だ」と考えがちで、マイナスの感情を生んでしまいます。

そこで大切になるのが、特性を持つ人への配慮を「特別なことにしない」です。つまり、「この配慮によって本人の力がより発揮される」といったポジティブな面を意識し、さらに「この配慮は本人のためだけでなく、みんなのためにもなる」と考えてみるのです。

たとえば、特性を持つメンバー用に丁寧なマニュアルを作成したところ、わかりやすいと評判になり、新人教育で使われるようになった、ということがありました。

また、細かいことにこだわり、なかなか仕事が進まない特性を持つメンバーに、納得いくまでデータをまとめる作業を任せたところ、必要なデータを抽出する新たな方法が編み出され、結果的に仕事が飛躍的に早くなった、ということもありました。

これらの事例のように、発達障害の特性をうまくとらえ、生かすことで、「みんなにもいいこと」という新たな利益を生み出せる可能性があるのです。

人の顔が一人ひとり違うように、人の脳もみんな違います。それぞれが持っている力を出し合える世の中になっていけばいいなと思っています。

 

【佐藤恵美(さとう・えみ)】
精神保健福祉士、公認心理師、臨床発達心理士。北里大学大学院医療系研究科産業精神保健学修了。医科学修士。病院勤務などを経て2020年に「メンタルサポート&コンサル沖縄」を設立し、代表を務める。専門は職場のメンタルヘルス。著書に『もし部下が発達障害だったら』(ディスカヴァー携書)などがある。

 

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