社会福祉事業の経営強化へ。生産性向上で社員の幸福度が高まる「合掌苑」
2019年08月27日 公開
仏教の慈悲の精神に基づき、創業者・市原秀翁師が東京都町田市で老人ホーム事業を開始してから59年。社会福祉法人・合掌苑は今、「合掌苑金森」「輝の杜」「鶴の苑」の3つの事業部で、特別養護老人ホーム、養護老人ホーム、通所療育施設、在宅サービス、有料老人ホーム、高齢者アパートの運営、訪問サービス、通所サービス、相談業務サービス、医療サービスなど、計35事業を運営しています。年間売り上げは27億円に上ります。
そして2015年、社員に数字の意識を高めることを目的にアメーバ経営を導入し、経営効率を深化させています。さらに、社会福祉事業の生産性向上と、社員の幸福度アップにどう役立てているのか、森一成理事長に伺いました。
東京大空襲で焼け残ったお寺からのスタート
――老人ホームの開始から59年、長きにわたって社会福祉事業を運営されているのですね。
森 じつはわれわれの事業のルーツは、昭和20年にまで遡ります。合掌苑の母体のお寺は東京都中野区にありました。東京大空襲の際、奇跡的に焼け残ったそのお寺の境内で、被災民の方のお世話をしたのが、そもそもの始まりです。
戦争も終わり、人々は少しずつお寺を離れていき、最後に残った身寄りもお金もないお年寄り18人のために施設を作ることになり、昭和28年、お寺の境内に老人ホームができました。
その後、昭和35年に東京都町田市に土地を買い、老人ホームを移転・開設。そこから現在に至るまで町田市を拠点に事業展開しています。老人ホームとしては町田市で一番古い存在です。
――今はどのような事業展開をされていますか?
森 現在は事業領域が広がり、老人ホームを4つ運営、入居しておられる方が300名弱ほど。さらに、デイサービスやショートステイなどの在宅サービス事業も行っており、そちらの実利用者数は700名ほどになります。事業の数では35事業、職員数が600名ほど、年間売り上げが27億円弱です。社会福祉法人としては、規模が大きい部類に入るかと思います。
――老人ホームの入居者は、やはり地元・町田市周辺の方が多いのですね。
森 地元の方がメインですが、少し前までは、住所が北海道や九州という方もおられました。
今から25年ほど前、町田市は、全国の自治体で初めて「呼び寄せ老人」という言葉を使いました。当時の町田市は、東京のベッドタウンとして、団塊の世代の人たちが大量に住んでいました。
彼らは地方から東京の大学に入り、東京で就職して結婚し、子供ができて家を買い求めたのが、町田市などの多摩地区あたり。
そして子供も独立して余裕ができ、ふっと故郷を見たら、80~90代の母親が一人で暮らしている。親戚は周りにはいるけれど、皆、年寄りばかりで何かがあっても動けない。
だから、「じゃあ、うちに来いよ」と東京に呼び寄せる。これが「呼び寄せ老人」です。そのような「呼び寄せ老人」の方が町田市には多く住んでいた。その中には、合掌苑に入居なさった方も少なからずおられたのです。
そして今は、呼び寄せた団塊の世代が70代後半になって、入居者となられたり、様々なサービスを受けていただくお客様になりました。ただ、入居者で一番多いのは90代。次が80代です。私が初めて合掌苑に来た30年ほど前は、「80代の一人暮らしは大変だね」と言っていましたが、今は90代の一人暮らしが当たり前になっています。