相手の話を聴いているつもりが、気づけば頭の中で全然別のことを考えていた...そんな経験は誰にでもあるのではないでしょうか。実はこれ、意志の弱さや不真面目さのせいではなく、脳の構造と現代の生活習慣に原因があるかもしれません。「聴けない理由」の意外な正体について、書籍『聴く技術 あなたの会話が今日から変わる』より解説します。
※本稿は、山根洋士著『聴く技術 あなたの会話が今日から変わる』(アスコム)より、内容を一部抜粋・編集したものです。
話を聴いているとき、脳はヒマ?
そもそも人の脳は、相手が話すスピードよりも速く情報を処理してしまいます。例えば、資料が配られて、プレゼンテーションを聴く場面をイメージしてみてください。相手が資料に沿って話すよりも速く、どんどん先に資料をめくって読んでしまうことがあります。途中からは「もう、だいたいわかった」と相手が話し終わるのを待つだけ。
人が話すスピードと脳が処理するスピードにはズレがあるのです。
すると脳は、あまった処理能力で別のことを考え始めます。プレゼンを聴くときであれば、「その提案を採用しようか」とか「何と言って断ろうか」、あるいは「このあとの会議どうしようかな」なんてことを考えてしまうかもしれません。
悪気があるとかではなく、脳に余力があるだけなのです。加えて最近は、「聴きたいことだけ聴く」スタイルに慣れてしまっていますから、なおさら、じっくり聴くのが苦手になります。
ファスト過ぎる生活が話を聴けなくする
「シークバーのない動画なんて見られない」というコメントを見て、そういう時代になったんだなぁと実感しました。
シークバーとは、ユーチューブ動画などの画面下に表示される、再生箇所を示す機能です。バーをタップすれば好きなところだけ再生できます。
動画は2倍速で視聴する人も多いといいますし、一時は映画を短縮した「ファスト映画」が問題にもなりました。本は要約サイトや解説動画が人気ですし、歌もイントロがどんどん短くなっているそうです。膨大な情報の海を生き抜くためには、こうした効率化やファスト化が理にかなっているし、不可欠だと思います。
ただ、対人コミュニケーションは別ではないでしょうか?
確かに人の話を聴いていると「要点だけ話してくれ」「結論を早く」と思うことはありますが、それは情報を得るためであって、人間関係を築く目的ではありません。
一部の言葉だけをとらえて「もうわかった」と解釈してしまうと、つい口を挟んだり、意見したくなったりして、ちゃんと聴けない原因になります。話を聴けない人、自分の話ばかりする人にならないように、気をつけなければいけません。
会話を邪魔するメンタルノイズ
聴けない人の特徴として紹介したいのが「真面目な人」。真面目な人は、相手の話を真剣に受け止めようとするあまり、逆に聴けない自分をつくりがちなところがあります。原因は、「メンタルノイズ」。
メンタルノイズとは、簡単に説明すると、あなたの言葉や行動に無意識に影響を与える心のクセです(拙著『「自己肯定感低めの人」のための本』で詳しく紹介しています)。
メンタルノイズにはいろいろな種類がありますが、真面目な人には、コミュニケーションを妨げるノイズを持っている方が多いのです。代表的なメンタルノイズは5つ。
①完璧主義ノイズ
②タイムイズマネーノイズ
③おもてなしノイズ
④ドMノイズ
⑤ちゃんとしなきゃノイズ
それぞれのノイズが会話にどんな影響を与えるか紹介すると、どんな些細なことにも完璧を求めるところがある「完璧主義ノイズ」があると、たわいない会話でも堅苦しくなりがち。相手もかまえてしまって、言葉を発することに慎重になってしまいます。
自分を急かすところがある「タイムイズマネーノイズ」があると、会話も急ぎがち。急かされた相手は自分のリズムで話しづらくなってしまいます。
人を喜ばすのはいいことだと刷り込まれている「おもてなしノイズ」があると、いつでもリアクションが大げさになりがち。大げさなリアクションには会話を盛り上げる効果もありますが、相手が求めていないときは逆効果になります。
努力するのは当たり前と刷り込まれている「ドMノイズ」があると、会話にも力が入り過ぎて質問が多くなりがち。それだけでも相手は話すのが面倒になります。さらに「ドMノイズ」は、自分だけでなく、相手にも努力を強要するところがあります。話を聴いてほしいだけだったのに、努力を求められると、話しているほうは責められている気分になると思います。
人は強くないといけないと刷り込まれている「ちゃんとしなきゃノイズ」があると、「ドMノイズ」と同じように、自分だけでなく相手にも、ちゃんとすることを求めがち。そのため、余計なアドバイスが多くなります。
いずれのメンタルノイズも、上手な聴き手になるには妨げとなるノイズです。しかも、真面目な人のノイズは心のクセとして強く刻まれている傾向があります。相手のためと思っての行為かもしれませんが、相手が話しづらくなっていることを覚えておきましょう。







