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「なんとなく」は思考停止のサイン 本音を言語化するセルフワーク

川岸宏司(株式会社DIL 共同創業者)

2026年06月10日 公開

「なんとなく」は思考停止のサイン 本音を言語化するセルフワーク

自身の行為に対して理由を聞かれたら「なんとなく」と答えてしまう人は少なくありません。起業家の川岸宏司さんは著書『なぜ、あの人の言葉は心に響くのか』にて、「なんとなく」は言語化から逃げる最も合理的な理由だと説明します。

同書より、内側にある本音を「なんとなく」で片づけないためのワークを紹介します。

※本稿は、川岸宏司著『なぜ、あの人の言葉は心に響くのか』(大和出版)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

「なんとなく」の理由を言語化する

本稿の言葉のタネは「なんとなく」です。

服を買いに行ったとき、その服を選んだのはなぜですか?ランチで、なぜそのお店に入りましたか? なぜ、電車でその席に座ったのですか?

おそらく、9割の人がこう答えるはずです。「え? 特に理由は......なんとなく」。

この「なんとなく」という言葉、一見、謙虚で無害な言葉に聞こえますが、言語化においてこれほど危険な言葉はありません。前回の記事でも説明した「ヤバい」が思考停止のスタンプだとしたら、「なんとなく」は「言語化から逃げる最も合理的な理由」です。

私たちが「なんとなく」と言うとき、頭の中では必ずなんらかの感情が動いています。ちなみに、その大半はネガティブな感情です。その感情があまりにネガティブだったり、認めたくないほど情けなかったりするからこそ、脳が無意識に蓋をして「なんとなく」というラベルで封印してしまう。この封印を解くには、それなりの「努力」が必要です。

脳が隠し、言葉では抽象化したがる不都合な真実を、あえて掘り起こす作業なので、痛みも伴います。でも、その痛みと向き合う努力の先にしか見つからない、極上の「言葉のタネ」があるということも覚えておいてください。

「なんとなく」の蓋を開けると、ドロドロとした人間臭い感情が詰まっています。

表面:「なんとなくこの服にした(地味な色の服)」
→裏側:【不安】「自信がないから、目立ちたくない。失敗しない色に逃げたい」

表面:「なんとなくこの店に入った(チェーン店)」
→裏側:【恐怖】「知らない店に入って、店員と会話するのが怖い。1人で浮くのが怖い」

表面:「なんとなくあの人を避けた」
→裏側:【怒り】「前回の会議で否定されたことを、まだ根に持っている」

表面:「なんとなくタスクを後回しにした」
→裏側:【恐怖】「手をつけた瞬間に『できない自分』が露呈するのが怖い」

心当たりは、ありませんか? これらを見ないふりをして通り過ぎることは簡単です。しかし、それでは永遠に自分の感情を掴むことはできません。

 

「尋問テクニック」で感情を引きずり出す

では、どうすれば言葉のタネにするための素直な本音を掻き出せるのか。私が行った対策は「選んだ理由」の可決視点ではなく、「選ばなかった理由」の否決・却下視点で問うことです。

次の3段階の尋問フローを見てください。今日の「服選び」を例にします。

ステップ1:自白させる 問:「今日、なぜそれを選んだ?」→答:「なんとなく、この黒いシャツを選びました」→まだ本音は出ません。

ステップ2:逃げ道を塞ぐ 問:「ほかにも選択肢はあったよね?」→答:「ええ、白いシャツもあったし、紺色のジャケットもありました」→事実を認識させます。

ステップ3:感情を吐かせる 問:「なぜ、白や紺を却下して、黒にした?」→答:「......白だと汚れが気になるし、紺だと気合が入っていると思われそうで。今日は誰にも会いたくなかったし、空気のように目立ちたくなかったんです」→確保!これが本音(言語化のタネ)です。

「なぜ選んだか」を問うと、人は建前を語ります。一方で「なぜほかを捨てたか」を問うと、そこには必ず「避けたい痛み」や「隠したい欲望」が隠れています。

 

無意識の選択に隠れる「4つの感情パターン」

私の経験上ですが、この尋問で出てくる感情は、大きく4つのパターンに分類できます。まずは入口として参考にしてみてください。

①【快】(接近×自分軸)
→理由:「好きだから」「心地いいから」 例:「このカフェ、BGMが好きだから選んだ」

②【承認欲求】(接近×他人軸)
→理由:「褒められたい」「すごいと思われたい」 例:「センスがいいと言われたくて、この服を選んだ」

③【不安】(回避×自分軸)
→理由:「失敗したくない」「面倒を避けたい」 例:「午後眠くなるのが嫌で、ラーメンではなく蕎麦にした」

④【恐怖】(回避×他人軸)
→理由:「嫌われたくない」「浮きたくない」「否定されたくない」 例:「Aさんに否定されるのが怖くて、Bさんに話しかけた」

驚くべきことに、私たちの「なんとなく」の多くは、③の不安や④の恐怖といった「回避(逃げ)」の感情からきています。

恥を忍んでですが、私の「自白録」を公開します。些細な行動の裏に、どれほど情けない感情が隠れているか、笑ってやってください。

ケース1:カフェの席選び

表面:「なんとなく窓際の席にした」

尋問:「なぜ奥のソファ席を却下した?」

発掘された感情(不安・恐怖):「背後に人がいると落ち着かない。何かあったときにすぐ店を出られる位置じゃないと怖い」

気づき:私は常に「逃げ道」を確保しないと安心できない、「臆病で警戒心の強い人間」だった。

ケース2:SNSの「いいね」

表面:「なんとなく『いいね』を押した」 尋問:「なぜその投稿? 他にも流れてきたよね?」

発掘された感情(承認欲求・不安):「この人に『見てるよ』と伝えておかないと、関係が切れるのが怖い。次会ったときに気まずくなりたくない」

気づき:私の「いいね」は共感ではなく、単なる「人間関係の維持コスト」だった。

ケース3:タスクの後回し

表面:「なんとなく明日やろうと思った」

尋問:「なぜ今日やらなかった? 時間はあったよね?」

発掘された感情(恐怖):「手をつけた瞬間に、うまくできない自分が露呈しそうで怖い。明日になれば魔法のように能力が上がっていると期待したい(そんなわけないのに)」

気づき:先延ばしの正体は、怠惰ではなく「無能さがバレる恐怖」だった。

 

自分の中の「人間味」を掘り起こしていく

見てわかる通り、自分の本音を知ることは、最初は痛みを伴います。「自分はこんなにも臆病で、見栄っ張りで、計算高い人間だったのか」と、直視するのが嫌になるかもしれません。

だからこそ、脳は「なんとなく」というオブラートで包んで、あなたを守ろうとします。そして気づくと言葉で蓋をし、感情の言語化が下手になる。

でも、オブラートを剥がす「努力」を放棄しないでください。美しい言葉や、人の心を打つ言葉は、自分の中にある、目を背けたくなるような「弱さ」や「ズルさ」を、汗をかいて掘り起こした先にしか見つからないからです。

だからこそ、今日から、寝る前の1分間だけでいいので、自分への尋問を行ってみてください。「なぜ、ほかの選択肢を却下したのか?」その問いと向き合う泥臭い努力こそが、あなたの言葉に圧倒的な「人間味」を宿らせてくれると思っています。

プロフィール

川岸宏司(かわぎし・こうじ)

株式会社DIL 共同創業者

貧困生活の中、16歳で社会に出て、17歳で貴金属事業を共同起業。自己成長のために本を読み始めるも、「面白いが時間がかかる」という悩みから速読教室に通う。しかし、多額を投じて試した手法はいずれも理解を置き去りにすると痛感する。速読手法を追い求める中で、読書は「文字を目で追いながら、脳内で音として理解する行為」と気づく。
そこで、読書速度の上限は、「脳の内なる声」の処理速度に基づくと仮説を立てる。高速音声を継続的に聴くことで、「脳の内なる声」の処理を鍛えるメソッドを開発。科学的根拠を踏まえた「理解を犠牲にしない速読法」を確立した。自身が運営していた有料読書コミュニティ内で速読講座を開いたところ、1000人以上から高い評価を得た。実務と研究を往復しながら、「速く、深く、人生を変える読書」の体験をひろげている。
現在は、株式会社DILを含む複数会社を経営し、SNS顧問/デザイン/営業代行/書籍プロデュースの業務を担う。Voicy『マグの1%読書ラジオ』は累計再生180万回超。2020年開始のXでは読書術/言語化術を発信し、5年で10万フォロワーを突破。

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