もったいぶって話す
会話のなかでやたらとクイズを出したがる人がいます。
「そのとき、どうしたと思います?」
「私って、何歳に見えます?」
「わからない? じゃあヒント出しましょうか」
スムーズに議論を進めたいときにこれをやられるとイライラしますし、他愛のない雑談でも、クイズを連発されると疲れます。「あなたの年齢なんて、別に知りたくないんだけど……」とゲンナリするわけです。
クイズを出したがる人は、注目を集めたい気持ち、みんなが知らないことを知っていると自慢したい気持ちがあるのでしょう。そして、みんなもこの話題に興味があると信じて疑わない無邪気さもあわせ持っています。だからこそ、話の流れをさえぎってでも、クイズを出したり、もったいぶった話し方をしたりしてしまうのです。
人の話を聞くには、時間と労力が必要。特に、ちゃんと人の話を聞こうとする人は、適度に相づちを打って話を促したり、言いたいことがあっても我慢して聞く側に回ったりといった努力をしているものです。
それなのに、終始自分のペースで話し、勝手にクイズを出す。そこには「自分の話が相手にとって負担かもしれない」という想像力が足りていないわけです。
もしあなたがこのような話し方をしていても、「もったいぶらずに早く言ってよ」と面と向かって言われることはまずないでしょう。
多くの人は苦笑いしながら「わからないなあ」「う~ん、なんだろう」などと適当に返してくるはず。しかし、これはまさに「早く話を進めてほしい」という合図ですから、すぐに正解を教えるようにしましょう。
「ロジカル」な話し方が鼻につく
A「職場の同僚にすすめられて、『〇〇〇』っていうミステリー小説を読んだんだけど、これがめちゃくちゃおもしろかったんだよ」
B 「ふーん……内容を3行でまとめると?」
A 「えっ?」
書店でビジネス書の棚を見ると、「ロジカルシンキング(論理的思考)」とか「できる人の話し方」といったハウツー本が大きなスペースを占めています。
本を開いてみると「まずは結論から」「簡潔に整理する」「図解することで問題を解決できる」などと書いてあります。ビジネスパーソンの間では、もはや 「ロジカルであるべし」というのは常識になりつつあります。
だからこそ、そういう「できる人(風)のコミュニケーション術」を、プライベートでも振り回すタイプの人には困ってしまいます。
会話例でいえば、Aさんが欲しかった反応は「へえ、どんな本なの?」といった反応でしょう。「おもしろい本を読んだんだね。私も興味があるよ」という共感を表わすサインです。
コミュニケーションには大きく分けて2通りあります。情報を端的に伝達する場合と、気持ちを分かち合う場合です。
この例ではAさんは気持ちを分かち合おうとし、Bさんは情報を欲しがっている。そこのズレが問題となっています。
本来、2つのコミュニケーションはどちらも必要なもので、いわば「両利き」でなければいけません。たとえば上司に仕事の報告をするときは、ロジカルかつ端的でなくては困ります。
会社を経営している僕の友人は、プレゼンの結果が知りたくて部下に「どうだった?」と聞くと、「大変だったんですよ。僕はすごくがんばったんですけど」といった返答をされるのにほとほと手を焼く、と嘆いています。この場合は端的に「受注できませんでした」という情報が欲しいわけです。
ですから、一概にロジカルなコミュニケーションがいけないわけではありません。ただ「できる人」にならなくては! という意識が高すぎて、プライベートや友人とのちょっとした話題に対しても、理屈で押し通してしまうと、冒頭に挙げた「3行でまとめると?」のような面倒くさい人になってしまうのです。
「理屈や論理は得意だけど、共感する話し方が苦手」という人(特に男性)は、まずは語尾に「ね」を付けるように心がけましょう。
たとえば奥さんに「今日、子どもが学校で先生に叱られたって」と言われたときも、「ちょっと、それ、何があったんだよ!?」ではなく、「え!? 何があったんだろうね」と言えるだけでだいぶ違います(とはいえ、「その本の内容を3行でまとめると、どうなるんだろうね?」はさすがに焼け石に水かもしれませんが……)。