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[歓喜の経営]お客さまの感動こそ私たちの喜び

2014年09月22日 公開

金子和斗志(アイ・ケイ・ケイ社長)

ゲストハウス型婚礼施設「ララシャンス」を全国に展開するアイ・ケイ・ケイ株式会社(佐賀県伊万里市)。前身である12室のビジネスホテルから飛躍的な成長を遂げ、昨年、東証一部上場を果たした。

ホスピタリティの精神にあふれる仕事で顧客の評価を高め、不況下でも毎年売上を伸ばしている。「働きがいのある会社」ランキング(GPTWジャパン)では2014年度、11位と上位にランクされた(100人以上999人以下の中規模部門)。

豊かな発想で感動の結婚式をプロデュースする社員たち。その高いモチベーションと成長意欲は、経営理念の浸透と内なる歓喜に支えられていた。<取材・構成:若林邦秀/写真撮影:河本純一>

《『PHPビジネスレビュー松下幸之助塾』2014年9・10月号Vol.19[特集]歓喜の経営を生みだす より》

 

「お客さまを好きになる」のが「プロ」の条件

 1組のカップルが永遠の愛を誓い、新たな人生の歩みを始めるウェディング。ご親族、ご友人の心からの祝福によって送り出される感動の瞬間です。私たちの事業は、そのお客さまの感動のためにあります。

 ウェディングは、1組1組のカップルにとってかけがえのないものであり、すべてがオリジナルのイベントです。決してパッケージにして販売できるようなものではありません。ですから当社のスタッフは、1つひとつのウェディングに対して誠心誠意お客さまと向き合い、お客さまの気持ちに寄り添って、パーソナルなウェディングをつくりあげていくことに努めています。

 「お客さまを好きになり、お客さまの役に立ち、お客さまとの約束を守る」。これが「アイ・ケイ・ケイウェディングのプロ」の条件です。だれでも好きな人のためには一所懸命、何でもやってあげたいと思いますよね。そして、その人が笑顔になってくれたら、それだけで自分もうれしくなるものです。

 先日も、ある支店からこんな報告を受けました。披露宴がフィナーレに近づき、新郎新婦がご両親への感謝の手紙を読み上げました。会場にじんわりとあたたかい空気が広がるなか、2人は退場します。

 ところが、そこからです。新郎新婦がサングラスをかけて再入場すると、雰囲気が一転、アップテンポな音楽に合わせてダンスを踊り始めたのです。周りにいたスタッフも同時にサングラスをかけ、同調します。お越しになったすべてのゲストに対して心からの感謝を表現したいという新郎新婦のサプライズの希望を()えるため、スタッフも全員で協力することにしました。ご友人の皆さまは立ち上がって一緒に踊り、足のお悪いおばあさまは手拍子をされたりと、会場が1つになって感動の渦に包まれたそうです。

 お客さまと一緒になって、世界に1つだけの感動のウェディングをつくりあげる。お客さまの感動こそが、アイ・ケイ・ケイ社員の最大の喜びなのです。そしてこの喜びのために、社員は皆、アイデアを出し、議論を交わしながら、楽しく、ほんとうに楽しそうにウェディングをつくりあげていってくれます。私自身、ウェディングの事業に携わって30年以上がたちますが、これほど感動的ですばらしい仕事はないと思っています。

 すべては「お客さまの感動のために」――これが、当社の経営理念の核です。何か現場で迷ったときも、この理念に合致するかどうかで判断ができます。極端な例では、新郎新婦が馬に乗って入場したというケースもありました。これには私も驚きました。当社はとにかく、お客さまの感動に資することであれば(もちろん安全面などは十分に考慮したうえで)何をやってもいいという会社なのです。

 ただ、人は一度味わった感動には慣れていきます。時代の流れやお客さまの嗜好()の変化をよく読み取り、常に新しい感動を創造していく努力が必要です。そこで、今年の秋に「感動創造部」(仮称)を立ち上げ、各事業所の情報を集約すると同時に、新たなアイデアの創造や情報発信を強化する予定です。

<写真>各支店のトップである支配人は毎月福岡本部に集まり、泊まりがけで勉強会を開く。20代で支配人に抜擢される人も多く、皆、真剣に、楽しく学び合う。

 

ホスピタリティ精神を磨き挑戦者として行動せよ

 ところで、当社でいう「お客さま」とは、「自分以外のすべての人」のことを指します。ご成約いただいた新郎新婦だけが「お客さま」ではありません。家族、友人、同僚など、周辺のあらゆる関係者がお客さまであり、またすべての人が将来お客さまになる可能性のある方々です。

 さらに、当社で働く人は全員がお客さまのために業務に携わる人ですから、いわばお客さまの代理人です。他部門からのさまざまな要請は、当社では「お客さまの声」としてとらえ、迅速に対応することを徹底してきました。

 たとえば20代の若いプランナーがお客さまと打ち合わせをして、「料理を変えてほしい」というご要望を受けてきたとします。この若いプランナーが、50代のベテランシェフに「ここの料理をこう変えてください」と伝えれば、シェフは「分かりました」と言って指示どおりにします。

 飲食の世界でこの話をすると、「それができたら苦労しませんよ」という反応を示す方がいらっしゃいます。その気持ちは分かります。私も事業をスタートしたころは、言うことを聞かず、気に入らないことがあると突然辞めると言い出す厨房(スタッフに、ほんとうに悩まされたものです。

 しかし、厨房の幹部に経営マインドが根づいてから、状況は一変しました。常にお客さまの立場でものを考え、お客さまの代弁者である営業の要望には柔軟に応えていこうという姿勢が育まれました。

 厨房にかぎらず、営業、衣裳()、また間接部門も、当社の幹部は同様の経営マインドを持ち、それが組織に浸透してきました。したがって今、部門間で利害が対立するというような状況は、ほぼ起こりえなくなっています。このことが社内の風通しをよくし、アイデアや意見を出しやすい雰囲気を醸成していると思います。

 当社では、国籍・性別・年齢・経験に関係なく、みずから志願し努力する人には惜しみなく挑戦する機会が与えられます。ですから、入社5~6年目、20代後半で支配人になるケースもめずらしくありません。私自身、20代のとき両親が経営するビジネスホテルの責任者を任されました。社長に就任したのは29歳のときです。最初は、「こんなに若くて社長なんて、ありえない」と思いましたが、結果的にはやれたのです。「年齢や経歴なんて関係ない。意欲と向上心さえあれば、どんなことでも為し遂げられる」という私の人間観は、このとき培われたものです。

 一度しかない人生だから、その人が持つ可能性を最大限に発揮してもらいたい。そのために、がんばった人が正当に評価される仕組みづくりをしてきたつもりです。人事評価基準を明確にし、単に数字を上げた人ではなく、お客さまのためにホスピタリティの精神を磨き、挑戦者として行動する人を高く評価することを明記しました。また、上司による一方向からの評価だけでなく、同僚社員による評価も組み合わせた、360度評価を採用しています。

☆本サイトの記事は、雑誌掲載記事の冒頭部分を抜粋したものです。以下、「6次、7次まで行う採用面接とインターンシップ『世界維新』」「経営理念の確立と浸透で会社が変わり人生が変わる」と続き、最後に「若手管理職のホンネ」と題して2人の管理職のインタビュー記事「ノウハウを教えてもらった記憶はない」(男性取締役)、「感動の連続技を繰り出すのが夢」(女性スーパーバイザー)を掲載しています。記事全文につきましては、下記本誌をご覧ください。(WEB編集担当)

 


<掲載誌紹介>

PHPビジネスレビュー松下幸之助塾 2014年 9・10月号 Vol.19

<読みどころ> 9・10月号の特集は「歓喜の経営を生みだす」
 仕事の場が歓喜で沸きかえる。あるいは、歓喜とまではいかなくても、仕事の充実を味わえる。これがどれほど大事なことか。人生において相当の比重を占める仕事の時間を、明日の生活費を稼ぐための単なる「労働(labor)」ではなく、意義ある「仕事(work)」と心得、ひいては「遊び(play)」にまで昇華させることができれば、すばらしい成果を生む組織が誕生するのではないか。
 こうした問題意識に立った本特集では、従業員が仕事の上で歓喜を味わえるようにするための考え方と、企業での実践を探った。
 そのほか、クロネコヤマトの経営理念とからめて語った瀬戸薫氏の松下幸之助論や、ある僧侶との出会いによって素直な生き方にめざめた男性の自己修養の姿を描いたヒューマンドキュメント「一人一業」なども、ぜひお読みいただきたい。

 

著者紹介

金子和斗志(かねこ・かつし)

アイ・ケイ・ケイ社長

1952年佐賀県伊万里市生まれ。高校卒業後、大手スーパー勤務、ホテル学校での勉強を経て、両親が経営するホテルに入社。父の逝去後に社長を継ぎ、「伊万里迎賓館」「伊万里グランドホテル新館」などを建設。’95年アイ・ケイ・ケイ株式会社を設立し社長就任。2009年、ウェディング業界、ホテル業界初のISO22000(食品安全マネジメントシステムの国際規格)認証取得。’10年大証ジャスダック、’12年東証二部を経て、’13年東証一部上場。現在、全国13都市に15店舗の結婚式場を展開するほか、葬儀部門、介護部門の子会社も運営する。著書に『サービスの精神は「ありがとう」から生まれる』(コスモ教育出版)がある。

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