グーグルの社是と「10の事実」~空気のようにオフィスに宿る経営理念
2011年11月19日 公開 2023年01月05日 更新
空気のようにオフィスに宿る経営理念
まずは経営理念の日常感覚をお話しいただいた。
―経営理念のうちでも、まずミッション・ステートメント「世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにすること」についてどのように日常受け止められているのですか。
末松:新しいプロジェクトを始めようというときに、社是が一個の軸になるという感覚があります。ただ、それがすべてではありません。私たちが開発をしている延長上には実際にユーザーさんがいっぱいいらっしゃる。そのユーザーさんが便利になるようにするにはどうしたらいいかというほうが、もっと大きな軸になっていると思います。社是は一個の会社が持っている軸にすぎません。社是以前にユーザーさんのほうを見て、自然にミッション・ステートメントを共有しているという感覚です。
―「10の事実」とは、相当に意識している理念なのでしょうか。
末松:「10の事実」についても、社内でがんばって積極的に浸透させようという努力をしているわけではありません。仕事をしている中で自然に学んでいる感じですね。なかでも、「悪事を働かなくてもお金は稼げる。」は〝Don't be evil."などと社内でよく使われます。それと「遅いより速いほうがいい。」"Fast is better than slow."というのはよく言われます。
―通常の経営理念の表現とは違って、「10の事実」は、あまり"上から目線"という感じがしませんね。
末松:推測ですけれども、私どもの創業者ラリー・ペイジやサーゲイ・ブリンがまだエンジニアとしての気持ちを強く持っているというのが影響しているからではないでしょうか。自分も開発するんだという意識が結構強いから、押しつけの形ではないのかもしれないと思っています。
―理念というのは会社の中でも先輩から後輩へと伝えられるものと思いますが、グーグルではそうした文化がありますか。
末松:先輩からアドバイスされる中で、この理念の言葉自体を直接言われなくても、意識させられることが多いです。
河野:「10の事実」でも「五番目は何?」と訊かれたら、社員でも全然分からないと思います。実際「10の事実」を丸暗記している人は少ないかもしれません。ただ、働いていく中で自然にそれが身についてくるし、立ち返るところなのです。基本的にフラットな環境なので、先輩や上司がというよりも、その場にいる誰かが、自然に、「それってなんかちょっとevilになっちゃうんじゃない?」と出てくる感じです。