松下幸之助 指導者に求められる最高の熱意
2017年03月14日 公開 2022年08月18日 更新
リーダーにとって最も大事なことはなにか
経営者・指導者・リーダーにとって最も大事なことはなにか――それは「最高の熱意」であると、松下幸之助はよく述べていました。
「熱意こそものごとをなしとげるいちばんの要諦」「なんとなくやりたい、という程度では事はなるものではない。なんとしてもこれをやりとげようという熱意があってはじめて知恵も湧き、工夫も生まれてくるのである」というのが、幸之助の体験から生まれた信念でした。
そして、とくに指導者は「熱意に関してはだれにも負けないものを持たなくてはならない。知識なり、才能なりにおいては人に劣ってもよいが、熱意については最高でなければならない。指導者に、ぜひともこれをやりたいという強い熱意があれば、それは必ず人を動かすだろう。そしてその熱意に感じて、知恵ある人は知恵を、才能ある人は才能をといったように、それぞれの人が自分の持てるものを提供してくれるだろう。指導者は才能なきことを憂うる必要はないが、熱意なきことを恐れなくてはならない」と説いています。
幸之助の人生哲学は、「素直な心」「自己観照」「対立と調和」「衆知を集める」といった独特のキーワードによって「骨格」が形成されますが、この「熱意」という使い古された言葉も、いわば「血肉」を形成するようなものであり、同様に重視すべきものといえます。しかも幸之助の特徴として、「時」と「場合」と「場所」と「相手」によって、話すポイントやキーワードが変わるため、「血肉」の部分は異なった表現をすることがままあります。
たとえば冒頭でとりあげたリーダーにとって最も大事なことについても、自著『指導者の条件』では「熱意」とはまた違う条件を挙げ、その重要性を強調しています。
「私が最近お会いする機会があった人びとの中にも、指導者としてすぐれた成果をあげておられる人が何人かおられた。その中には企業の経営者もあれば、団体の指導者の立場にある人もある。いずれも、その業績も立派であり、また人柄もまことに好もしいという人ばかりである。(中略)その人びとが指導者として―――共通して強く感じられることがある。それは、どの人もまことに謙虚であるということである。そして、きわめて感謝の念にあつい人でもある」
そしてさらに、そうしたすぐれた経営者はその会社なり団体の最高指導者でありながら、「いちばん謙虚で、だれよりも感謝の心が強いように思われる」と書き記しています。
なぜ経営者・リーダーに「謙虚さ」と「感謝の心」が必要なのか。それは、その人が好感を持たれ、ひいては「衆知を集めることができる」=「多く人びとの知恵を集めることができる」からだと、幸之助はいいます。
リーダーの条件とは、考えようによっては、「無限」にあるものなのかもしれません。