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医学部に受かる人、落ちる人 カリスマ予備校講師が見つけた5つの違い

犬塚壮志(士教育代表取締役)

2018年09月14日 公開 2023年01月30日 更新

 

「完璧な受験勉強」にこだわる人が落ちる

まず、相違点1の「自己管理(セルフマネジメント)」ですが、医学部に合格する子は生活習慣を整え、自分の健康管理もしっかりやっています。

当たり前ですが、医師というのは、患者さんの病気を治したり、未然に病気を防いだりする仕事ですよね。また、とても忙しく過酷な仕事でもあります。

そんな職場環境である医師という仕事に就く人が、自らの受験勉強中の自己管理はめちゃくちゃで、健康管理も行き届いていないというのはある意味で医師の適性に欠けますよね。

もちろん、生まれつき病弱で、身体が強くないという教え子も中にはいました。ただ、その子は、自分はどこまでできて、何をすると健康を害してしまうのかを誰よりもわかっていていました。

自分の身体のことを熟知しているのです。そういった、自己管理(セルフマネジメント)がしっかりできている子は、意識的に良い生活リズムを作りながら、受験勉強も淡々とこなしていました。

次に、相違点2の「完璧主義」です。そもそも完璧主義とは、心理学的には、「定められた時間、限られた時間内で完璧な状態を目指す考え方をもち、過度に高い目標設定をし、自分に厳しい自己評価を課してしまう精神状態をもつこと」です。

医学部に限らないのですが、大学入試の本番では完璧、つまり満点を求められることはほとんどありません。つまり、受験勉強のプロセスにおいても、基本的には完璧は必要ありません。

しかし、医学部受験に失敗してしまう子の多くは、「医学部は偏差値が高い」という理由だけで、その道を断念してしまうことが少なくありません。

あるいは、参考書を隅から隅まで暗記しないと気が済まない子や、問題集を完璧に仕上げないと過去問に取り掛からない子など、真面目ですべて完璧にやらないと先に進みたくないといった性格の子は、たいてい失敗してしまいます。本人はすごく努力しているのに、本当にもったいない話です。

一方、受かる子は物事の考え方が柔軟で、目的意識(合格最低点を超える)をしっかり持っています。

そのための手段として、途中段階の参考書の知識のインプットや問題集では完璧を求めず、合格最低点を超えるための学力を身につけるためにその参考書や問題集があることを前提に7〜8割程度のできでも良しとしています。

 

模試の偏差値に関係なく逆転合格を勝ち取る「スライディング合格」

そして、相違点3の「戦略思考」です。医学部に受かる人は得てして皆、戦略的に受験勉強をしています。つまり、しっかりした“戦い方”を備えて勉強しているのです。

なぜかというと、医学部入試というのは、他の学部の入試と異なる点が多く、かなり複雑化しています。そのため、戦略の立て方次第で合否が変わってしまうのです。

そして、私は、特に医学部受験する生徒には、方針として「スライディング合格」というものを掲げています。「スライディング合格」とは、端的にいうと“周囲の人からは不可能だと思われていた子が、奇跡を起こしたかのような逆転劇で志望校に合格すること”で、私の造語です。

そもそもスライディングとは「地面に身体をすり付けて、すべり込む動作」のことで、「目標とする位置に、より早く到達する技術」のことです。

そのため、「スライディング合格」戦略とは、できるだけ最短の道で、どうにかギリギリですべり込んで合格しようというコンセプトの作戦であり、医学部受験をする生徒に実践してもらってきたのです。

多くの子が、スライディングをすれば「間に合う」、つまり「合格する」のに、医学部受験を失敗してしまう子の多くは、その仕組みの複雑さや高い偏差値、高倍率などにビビってしまい、その生徒本人の能力が最大限に活かされないまま入試を終えてしまっていました。

実は、「医学部に合格する」という目的のみを達成するのであれば、最初から高い偏差値を目指して(すべての問題でまんべんなく得点できることを目指して)勉強をするのは得策ではないのです。特に、大手予備校が実施する模試で高い偏差値を目指すことを主眼に置く方針は、はっきり言って間違っています。

模試で高い偏差値を出したにも関わらず入試本番で落ちた子を数多く見てきましたし、逆に、模試での偏差値がふるわなかった子が見事、医学部に合格していく姿も見てきました。

大切なことは、入試本番で、その大学の問題を何点取ることができるかであり、模試での偏差値は基本的には学習到達度の参考程度に留めておくべきです。

受験勉強のプロセスでは、受ける大学の過去問で何割くらい得点できるようになったのかということのほうが重要です。何度かの過去問演習で合格最低点(得点率)を超えることができるようになっていたら、それで良しとします。

こういった「スライディング合格」の考え方を盛り込んだ戦略こそが、「医学部合格への最短にして最良の道だ」と私は確信しています。

ちなみに、杏林大学の医学部に受かった私の生徒だったOさんは、翌々日に入学式を控えた3月30日に、補欠くり上がり合格をしました。これなど、まさにすべり込んでの危険な合格ですね(苦笑)。意図していなかった結果とは言え、これも立派な「スライディング合格」だと言えますね。

「スライディング合格」戦略というのは、「どうにかして1大学だけにでもギリギリで受かれば、それで結果オーライ」という考え方でもあるのです。

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