話題のLGBT映画『カランコエの花』監督・中川駿 「傷つけるより離れるほうが寂しい」
2018年09月27日 公開 2018年09月27日 更新
<<LGBT――この言葉を中心として政治家の発言や出版社の動向にも注目が集まり、セクシャルマイノリティ差別についての社会的議論を巻き起こしている。
そんな状況のなかで、東京・渋谷であるLGBTを題材とした一本の映画が話題を集めている。題名は『カランコエの花』。レインボーリール東京グランプリ(東京国際レズビアン&ゲイ映画祭)グランプリほか、映画祭6冠を含む計13冠を受賞するなど、評価は日増しに高まっている。
なぜ今、LGBTをテーマとした映画を作ったのか、そして監督自身がLGBTをどう考えているのか。中川駿監督にその思いを聞いた。>>
『カランコエの花』のコンセプトはLGBT当事者でなく周囲の目線
――このテーマで映画を撮ろうと思ったきっかけを教えて下さい。
(中川)渋谷区で同性パートナーシップが認められ、連日、LGBTがニュースで話題になっていたことが大きな契機となりました。
恥ずかしながら、僕自身、そこではじめて「LGBT」という言葉とその問題の難しさを知り、このテーマで映画を撮ることの必要性を強く感じたのがきっかけです。
ところが、テーマを決めていざ脚本を書こうとすると、手が止まってしまうのです。(LGBTではない)ストレートの自分がLGBTの人の葛藤を描くのは、想像に頼る部分が多くなってしまうし、不誠実ではないか、しかも時代的にもセンシティブなこのテーマに、軽々しく手は付けてはいけないのではないか、と。頭を抱えてしまいました。
思い悩んでいた時に、映画仲間の友人と話す機会があり、その折に当事者でもない自分がLGBTをテーマとした映画を撮っていいものか、と打ち明けました。すると、友人はこう私に言いました。
「その考え方がそもそも差別だよね」
つまり、そうやって”センシティブな題材だから””この問題に手を付けられない”と、このテーマから距離を取ってしまっていること自体が結果的に“差別”になってしまっていると指摘してくれたわけです。
また、ゲイの男性のブログとの出会いも大きなカギになりました。
そのブログには、「自分がゲイであることを人に伝えると、『教えてくれてありがとう』という言葉に続けて、『絶対誰にも言わないからね』と必ずといっていいほど言われる」と書かれていました。
ゲイであることを自分自身は何も悪いことだと思っていないのに、周りが「秘密にするね」という対応をする。あたかも、自分か悪いことをしているのかという気持ちになりますよね。
先ほどの友人に指摘されたことと重なりました。
周囲の善意や配慮が、結果的に差別につながることがあるのです。
僕にとって大きな気づきなりました。これをコンセプトに映画を製作することを決めたのです。