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行列の香港点心が激安580円なのにミシュラン星つきの理由

永井孝尚(マーケティング戦略コンサルタント)

2018年12月06日 公開 2019年04月03日 更新

200円ショボ弁当と550円充実弁当が、同じ材料費のナゾ

安くて美味しい店は、他にもある。ある街道沿いの弁当屋で、200円という激安弁当を買ったことがある。平日ランチタイムのみ営業の弁当屋が多いが、この店は365日24時間営業。安さを求めるお客さんが次々とやってきて、弁当を買っていく。

200円弁当は、ご飯にハンバーグ1個、パスタと漬け物が少々というやや寂しい内容。食べてみると、味は「まあまあ」。材料費(原価)は130円らしい。店の人件費も入れると、弁当1個の利益は10円程度という。利益は少ないが、24時間365日営業で商売が成り立っている。典型的な薄利多売の商売なのだ。

別の日。仕事で天王洲アイルに行くと、また行列が出来ている弁当屋を発見した。こちらは550円。いわゆるワンコイン弁当だ。大きくカットされた野菜が目立つ。試しに鶏肉入り弁当を買った。鶏肉は塩麹の味が染みてジューシー。野菜も新鮮だ。

「1000円弁当並みの内容だ。この店も利益ギリギリなんだろうなぁ」。

その夜、この店「旬八キッチン」がテレビで紹介されていた。若い社長の話を聞いて、驚いた。

「この弁当は、粗利75%なんですよ」

計算してみると、あの550円の充実健康弁当の材料費(原価)は138円。なんと、あの200円弁当とほぼ同じなのである。

とても不思議なことが起こっている。200円弁当の店は、こういっては失礼かもしれないが、ショボい弁当。550円弁当の店は、充実した美味しい健康弁当。しかし両方とも材料費(原価)は130円台なのだ。

旬八キッチンは「旬八」という青果店が始めた弁当店だ。旬八は、普通の青果店とは少し違う。青果市場では売れない、形やサイズがバラバラな「規格外品」を使っているのだ。

じつは規格外品は農作物全体の3割もあるという。旬八は、青果市場を通さず農家と直接取引することで、規格外品を半値で仕入れている。それまで捨てていた野菜や果物が売れる農家は大歓迎。お客さんも安く買える。旬八の青果店も粗利50%だという。

旬八は、皆がハッピーな青果店の仕組みを作ったのだ。しかし旬八でも完売できない野菜もある。そこで旬八キッチンは、それらを弁当の食材に使って粗利75%を実現できたのである。

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