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「がんで最期を迎えるのも悪くない」と語る外科医の本心

2019年06月06日 公開

中山祐次郎(外科医)

 

余命宣告を受けるのは本人よりも家族

がんと診断されたとき。治療の選択肢を提示され、悩むとき。治療をして、本人が痛みやはきけなどで苦しんでいるとき。そして、再発してしまったとき。なによりも、本人をお見送りしたとき。

こんな、大きな大きな波が、何度もご家族を襲います。

そのたびに、揺れ動く自分の心を落ち着けつつ、がん患者さん本人の心の上下を受け止めなければならないのです。しかも、自分はがんではないのだからと、気丈に振る舞い続けなければなりません。

私は外科医ですが、経過の最初から最後まで、がん患者さんの治療に当たることがよくあります。つまりがんという診断をするところから手術、抗がん剤、そして緩和治療からお看取りまで、です。

何年にもわたり、患者さんとお付き合いしていく中で、私は患者さんご本人だけでなく、ご家族とも濃厚にお付き合いをします。

特に、私がご家族と何度もお話をするのは、がんの終末期にさしかかった場合です。終末期には、ご本人にははっきりと「あと3ヶ月です」などとお伝えすることはあまり多くありません。

しかし、ご家族には正確な予後(よご)(今からあとどれくらいの期間生きられるか)を伝えることがほとんどです。ですから、ご本人抜きで、ご家族と私だけで話をすることが増えていきます。

ご家族によっては心配されて、毎日お話をすることもあります。そういったことを通じて、私はがん患者さんのご家族がどれほど心をゆさぶられているか、ずっと拝見してきました。

その経験から、ときにご家族は、がん患者さんよりもつらいのではないかと考えるようになりました。もしかしたら、「第二の患者さん」という言葉よりも、もっときついのかもしれません。

 

患者が望んでいるのは、家族が無理をすることではない

ですから、ご家族ががんにかかってしまった、あるいは大切な人ががんにかかってしまった、という方へ、私からのメッセージをお伝えしたいと思います。

まずは、「あなた自身も、がん患者さんと同じか、それ以上につらい」ということを知っておいていただきたいのです。

希望も何もないようですが、「ああ、つらいものなんだ、家族も」と知ることで、そのつらさは少しやわらげられるかもしれません。

そして、「つらい」とおっしゃってよいですし、誰かにぐちを言ってもいいのです。あなたは、がんにかかった方の苦しみすべてを受け止める必要はありません。

本人がつらい治療をしていても、あなたは遊びに行ってもいいし、美味しいものを食べてもいいのです。そして、無理に明るくしたり、ポジティブでい続けなくてもいいと私は思います。ときに、ご本人と一緒に落ち込んだっていいのではとさえ思うのです。

ご本人を想う気持ちの大きさは、何をしてあげられたか、どれほど自分を捧げたかではありません。

あなたが元気で楽しそうに暮らしていることだって、ご本人を想うということになるのです。だって、ご本人はあなたが楽しそうにしていることを望んでいるのですから。

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