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「売上目標は無意味」を証明してしまった女性経営者

中村朱美(佰食屋:ひゃくしょくや)

2019年08月05日 公開 2023年06月05日 更新

中村朱美

売上を目標にしない企業は社員になにを課しているのか?

佰食屋には、クレド(行動規範・信条)があります。

「会社は明日の責任を。みんなは今日の責任を。」

「会社は明日の責任を。」そのつづきには、こう記しています。「会社はこれからの集客や広報に責任を持ち、お客様にたくさん来ていただく努力をし、みんなを大切にします」。次に「みんなは今日の責任を。」

その下にはこうあります。「みんなはお客様が限られた時間の中で最大限満足していただけるよう、 接客・調理・おもてなしの努力をし、お客様を大切にします」。

つまり、佰食屋が従業員に求めるのは「現場」です。逆に言うと、それ以外のことは一切業務として課すことはありません。

 

佰食屋で働く社員たちの本音

――これまでの職場での働き方と、どんなところが違いますか?

【Nさん】売り上げって結局、お金じゃないですか。全部、計算の世界で。でも、ここはあくまでも「売れた数」なんですよ。なんぼ(どれくらい)がお金になって、ロスがなんぼで、という計算が一切ないし、そこはだいぶ楽ですね。

あとメニューも3品しかないので、この材料が余り気味だから、こんなメニューをつくって、というのもないです。居酒屋だと、「お酒をもっと頼んでもらえ」とか、1ケースしか売れなかったら、「なんで今日の集客悪かったのか」とか、書かされるんですよ。

でもここは「そういう集客は経営者の仕事やから」と言い切ってくれはるので、現場のことに集中できますね。集中して、料理を喜んで出す、というのは基本の基本なんですけど、それができるのはありがたいです。

――「100食限定」というビジネスモデルは改めてどうですか?

【Kさん】「100食限定」っていう言葉が単純にお客様を引き寄せるだけじゃなくて、働き方すら、働く意識すら変えている、というのは実感しますね。ゴールがわかっているからこっちにも余裕が生まれますし、その従業員の気持ちの持ちようが違うと、やっぱりお客様にも伝わるんですよね。

あとは、「お客様をお金として見ずにすむ」んですよ。ふつう、儲かって売れることは嬉しいはずなのに、飲食店ってあんまり現場が嬉しくないことが多いじゃないですか。

自分がお客さんとして行った店でも、忙しいと、出されたものをひたすら配膳する。レジを打つ。「ありがとうございました」すら言われない、みたいな。

前職はサービス業だったので、お客様が来てくれたら、「とりあえずいくら落としてくれるんだ」とか、どうしてもそういう感覚でしか見られなかった。

でも、佰食屋はそもそもメニューは限られているし、ここで1万円払うお客様は誰もいないし、1日で売るのは100食って決まってるし、だからそういうふうに絶対見なくていいんです。

お客様というより、人として見ればいい。「新作出ましたけど」と無理になにかをお勧めしなくてもいい。この人はなにを求めてるんだろう? お茶なのか、水なのか、そういうところを見られるようになりましたね。

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