都心部のマンション需要は下がらない
さて、それでは日本において、「中国バブル崩壊」がもたらす不動産価格への影響を見てみよう。一時期、中国人による東京のタワーマンションの「爆買い」が話題になった。
多くは投資目的であり、税制改正によってタワーマンションを利用した租税回避(タワマン節税)の穴がふさがれ、2015年の中国株式バブル崩壊と中国からの資金持ち出し規制が厳格化されたことで大量の売りが発生した。
このため、豊洲やお台場など湾岸エリアの高層マンションも多く売り出されている。また、2019年の台風19号によるタワーマンションの構造的欠陥(停電で機能が停止する)も表面化し、東京五輪後はさらなる爆売りが予想される。
だが、こうした状況でも、都心のタワーマンションを買っているのが香港人である。カナダやオーストラリアに一時移住していた香港の富裕層がビジネス目的で香港に戻っていたが、香港のデモ以後、彼らは再び移住先に戻る動きが見られる。
そのため、日本にも香港からの移住者が多くなっている。現在、日本の高級マンションを購入しているのは、そうした香港の金持ちたちである。
これは当然、香港情勢を反映した投資である。投資としての旨味はなくなったが、いざという時に国外に逃げ出すための資産として価値がある。このため、実需により中央区や千代田区、港区の都心三区のマンション価格は再び上昇に転じている。
また、台湾人富裕層も香港人と同様の発想で買い続けている。しかし、これも地域差が大きく、便利な都心部に限定されたものになっている。これは地方も同様で県庁所在地などの土地中心部に限ったものであり、地域間格差は大きくなると思われる。
こうした動きから、東京五輪後の不動産価格の変動をおおよそ予想することができるだろう。