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生き方

仕事ができない人ほど好きな「年賀状と新年会」

成毛眞(HONZ代表)

2020年01月07日 公開 2022年11月30日 更新

 

打算でつながるより、仕事で爪痕を残せ

年賀状をなぜ出すかと言えば、「自分のことを覚えておいてほしい」からだろう。

しかし、インパクトのある仕事や丁寧な仕事をしてくれた人については、定期的な挨拶がなくても、しばらく会っていなくても、相手は必ず覚えているものだ。そして、仕事をお願いしたいとなったとき、必ず、「ああ、あの件だったらあの人に聞いてみよう」となる。

一種の病気なのかもしれないが、私は人の名前や住んでいる場所がまったく覚えられない。よく飲んでいる相手に対しても、飲んでいる途中や飲み終わったあとに、「自宅どこでしたっけ?」と最低でも5回は質問するぐらいだ。

しかし、そんな私でも、クオリティの高い仕事をして爪痕を残した人のことは、しっかりと覚えている。

先日も、昔、自分が気に入った写真を撮ってくれたフォトグラファーに、新しいプロフィール写真を撮ってもらおうと、10年ぶりに電話をした。どうしてもその人に撮ってほしかったのだ。

例のごとく名前が頭に浮かばなかったのだが、その写真を撮ってもらった媒体のことをかすかに覚えていたので、その版元の編集者に「あの人、誰だっけ?」と電話したら、なんとその編集者の旦那さんで、腰を抜かした。晴れて10年ぶりの撮影を終えて飲みに行き、めちゃくちゃ仲良くなったわけだ。

このように、どんな仕事でも爪痕を残しておくと、思いがけない形で声が掛かるということがある。逆に言えば、年賀状をせっせと書いている人は、自分が爪痕を残しているという自信がないのだろう。そんな暇があるなら、インパクトのある仕事をしろ、と声を大にして言いたい。

 

新年会も要らない

忘年会や新年会を積極的に行なう企業も減っている。最近の若い世代は、会社と距離をおいていて、社内の人付き合いをあまりしなくなっていると聞く。

お酒を飲む頻度も減っているし、職場の忘年会に参加しない「忘年会スルー」という言葉が話題になるのも当然だ。その結果、上司が部下を飲みに誘っても断られてしまうので、飲みニケーションが成り立たないという。

そういう状況が良いか悪いかといったら、私は良いことだと思っている。会社は仕事をする場であり、ウエットな人間関係なんて関係ない。

そう言えるのは、私自身を振り返っても、社内の人とはほとんど飲みに行ったことがないからだ。新卒の3年間だけは、同僚と同じ下宿先で共同生活をしていたので飲みに行く機会はあったが、それ以降はほとんど行っていない。せいぜい何かのプロジェクトの打ち上げぐらいだろうか。

アスキーに在籍していたときは、エンジニアリングの部署にいたのだが、私と秘書だけが営業で、あとは全員エンジニアかプログラマーという部署なので、まったく飲まなかった。

UNIXを作っていたのだけど、技術者たちは泊まり込みで作っているので、外に飲みに行くヒマなどないのだ。炊飯器を持ち込んで、コンピュータルームの筐きょう体たいの中で炊いている不届き者がいたぐらいである。

ところが、ある日、エンジニアチームの部長が、誰かからもらったと言って、4斗と入りの紹興酒の甕かめを持ってきたことがあった。すると、夜になって、エンジニアたちが紹興酒をひしゃくで常飲するようになった。

それで、クリスマスのときにどんちゃん騒ぎをしていたら、誰かがその紹興酒の甕を蹴り倒して、コンピュータがびしょびしょに。システムをすべて作り直しという大惨事が起きたことがあった。費用は3000万円。職場に紹興酒の甕は持ち込んではいけないと痛感した。

話を戻すと、会議の代わりにビアガーデンに行くならともかく、社内での人間関係を構築するために、飲みに行くのはあまり必要ないと思う。それなら社外の人と行ったほうがよっぽど有意義だ。

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部下の結婚式や披露宴には行くな

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