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ITへの転換を“余儀なくされた”エネルギー業界が教える「アフターコロナに生き残る術」

平松昌(エネルギービジネスコンサルタント)

2020年06月02日 公開

 

過大投資は命取り!スピード・コスト重視で小さく始める

エネルギー業界で明暗を分けたIT戦略の有無は、他業界でも大いに参考になるところが多い。激動の時代を勝ち抜くためには、経営戦略と整合性の取れたIT戦略を作り上げていくことが重要になる。その際に、最も重要になるのはスピードであり、それに伴うコストもポイントとなる。

今後も状況が大きく変わっていくことを考えれば、最初から機能が盛りだくさんのシステムサービスを利用することは命取りになる。なぜなら、その実装している機能が不要になったり、大きく変わったりするからだ。システムが大きければ、それなりのメンテナンスコストがかかり、改修時にも大きな工数・コストと時間がかかる。

さらに、業界変動が起きる前提では、コアなシステムも自社で構築するか、可能な限りフットワークの軽い、コストがかからない方式、既存サービスの活用などで導入するのが望ましい。

自社開発というと、かなりのコストがかかるのではという疑問を抱かれるかもしれないが、コスト低減のために、例えばより安価なSI(システムインテグレーター)会社やオフショアの開発等を利用するケースも出てきている。

海外などに開発委託するオフショア開発と聞くと、自社の専門的な知識や業界知識が理解できるのかなど不安はあると思うが、業界に特化したSI会社やオフショアの開発を行っている企業も、探してみると意外と存在している。

自社に要件定義できる人員がいたり、その支援ができる外部要員を組織できれば、このオフショアを利用して構築する方法もある。

また、最近はやりのブロックチェーンなどの仕組みもオフショアのベンダーの方が経験も多く、安価で仕組みを提供してくれるのでおすすめだ。

次に重要な点としては、クラウド化がある。こちらに関しても、パブリックサービスの利用が有利だ。

自社でインフラ資産を保有せず、セキュリティやバックアップ等に無駄なコストをかけずに済む点と、外部と連携して利用できる点で、クラウドサービスはお勧めだ。時間をかけずに構築できる点も良い。

長年の慣習や前例から既存のサービスやITベンダーの高額なサービスをなんとなく利用し続けているケースはかなり多い。今こそ、そうした惰性で支払い続けているコストや時間の無駄を見直し、事業を躍進させるチャンスでもあるのだ。

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混乱の中では、いち早く“変化”できたものだけが生き残る

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