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公園が楽しくなかった「目の見えない息子」と「運動が苦手な父親」のその後



2021年03月08日 公開

澤田智洋(コピーライター・世界ゆるスポーツ協会代表理事)

ゆるスポーツ「イモムシラグビー」

だれもが持つマイノリティ性=「苦手」や「できないこと」や「障害」や「コンプレックス」は、克服しなければならないものではなく、生かせるものだ――各界が注目する「福祉の世界で活躍するコピーライター」澤田智洋氏は語る。

ひとりが抱える弱さを起点に、みんなが生きやすい社会をつくる。これが、澤田氏の提唱する「マイノリティデザイン」という方法論。「弱さ」を起点にさまざまな社会課題を解決する仕掛け人が、仕事の全貌を明かしてくれた。

※本稿は、澤田智洋著「マイノリティデザイン」(ライツ社)から一部抜粋・編集したものです。

 

目の見えない息子と公園に行っても、することがなかった

2012年、広告会社に勤めるコピーライターだった僕に、息子が生まれました。でも生まれて3ヶ月後に、息子には先天性の視覚障害があり、まったく目が見えないことがわかりました。僕はまったく仕事が手につかなくなりました。

休日、家族3人で公園に出かけると、ほかの親子が気になります。バドミントンやキャッチボール、犬と一緒にフリスビーを飛ばす人、自転車の練習をしている人……。そんな彼らを横目に僕らはというと、レジャーシートを広げて、お弁当を食べて、名前もよくわからない太鼓を叩くことくらいしかできませんでした。

「どうやって、息子と遊んだらいいんだろう?」

みんながわいわいスポーツをする中、「ポン」という乾いた音が、空に響きます。

ポン。世の中にはこんなにエンターテイメントがあふれているはずなのに。どうして「目が見えない」となった途端に選択肢がなくなってしまうんだろう。

ポン。世の中には目の見えない人、耳の聞こえない人、歩けない人がたくさんいるのに、なぜ彼らが楽しめるコンテンツがほとんどないんだろう。

ポンポンポンポン……。僕は怒りにも似た気持ちで、空虚に響く太鼓を叩いてみるのでした。

そんな疑問が湧いたのと同時に、スポーツに対しては自分自身も同じ「マイノリティ」であることに気づかされました。「極度の運動音痴」だったからです。

 

「医学モデル」と「社会モデル」という異なる考え方

小学生のときから体育の時間が大嫌いでした。足は遅いし、球技となると「澤田が決めたら倍の点数な」とハンデをつけられる始末。足の速いクラスメートが女子たちからキャーキャー言われるのを横目に、僕はクラスで生き残るための活路として、「クラス新聞」を自主制作しはじめました。

だれに頼まれるわけでもなく教室の出来事を記事化して、「はてなくんをさがせ」なんていう連載コーナーまでつくって、「澤田くんのやっていることは意味ないと思います!」と帰りの会で女子から鋭い宣告を受けました。

話が逸れました。ところが、福祉の世界に飛び込んでみて、「医学モデル」「社会モデル」という考え方があることを知ってから、僕は再びスポーツに歩み寄ることになります。

たとえば、脳性麻痺で車イスを使っている人がいたときに、「日常生活が大変なのは、あなたに原因がある。だからリハビリして、あなたを『健常者化』しましょう」というのが医学モデル。

一方で、「日常生活が大変なのは、社会に原因がある。だから段差をなくしたり、エレベーターを設置しましょう」というのが社会モデル。

これを知ったときに、「あ!」と思ったんです。体育が苦手なのは自分のせいだと思ってきたけど、「社会モデル」で捉え直すと、ひょっとして、ひょっとしてだけど、「これって体育のほうが悪かったんじゃない?」。衝撃的な発見でした。

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