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コロナショック真っ只中に「不動産」で独立してしまった元日本No.1営業マンの“涙と笑顔の理由”

天田浩平(株式会社エイマックス代表取締役)

2021年03月17日 公開 2022年10月12日 更新

不動産投資

コロナ拡大により業界は大ダメージ

不動産業界でのコロナショックの大きさは凄まじいものだった。

2020年の2月・3月は通常通りの販売実績を保っていたが、4月に入ると不動産を購入したいというお客様の熱が明らかに冷めてしまったのだ。東日本大震災の際もしばらくは自粛ムードになったように、非常時になると投資の勢いは一時的に足踏み状態になる。

また、業界的に対面営業が主流だったため、リモートでの営業に上手く切り替えができなかった影響も大きい。オンラインでは思ったほどこちらの熱が伝わらず、これまでに感じたことのなかった歯がゆい思いを何度もした。

コロナ禍になってお客様の反応は様々だったが、「みんな騒ぎすぎじゃない?大げさだよね」と楽観的な人もいたことも確かだ。そうした投資熱の高い方への営業で何とか食いつないでいたが、それでも結果として、会社全体の利益は前年比の半分近くまで落ち込んだ。

私自身も対面ほど営業の手応えもなく、同じく前年比の半数に営業成績は留まることになった。昨年の成績を思えば散々たる結果だったが、悲嘆している場合ではなかった。金融機関が通常営業に戻った5月以降は、新しく仕入れた物件の販売に勤しむことにした。

空き時間になると、懇意にさせてもらっている同業他社の社長への相談は欠かさなかった。どこに電話しても今は厳しいという言葉しか聞かなかったが、その言葉を聞くたびに自分にも問いかけていた。自分は独立する意思が本当にあるのか?

 

不動産業界で困窮し、不動産物件に助けられる

会社の固定費が軽微な状態だったとはいえ、事務所の家賃だけは発生する。そうした最中でも私は何とか自分の会社を手放さずにいられた。その理由はやはり不動産のおかげだった。

実はサラリーマンとして中古ワンルーム販売の営業を手がける傍ら、自分でも都内を中心に区分マンション13室、一棟物件6棟、合計88室を所有し、大家業もしていたのだ。

最初の1室は営業マンとして自分自身が購入していないとお客様への説得力に欠けるという思いで購入したが、徐々に自分で不動産投資することの面白さと収益の手堅さを実感し、独立前から少しづつ所有物件を増やしていたのだ。これが私を助けることに繋がった。

意外に思われるかもしれないが、東京の中古ワンルームにおける家賃収入はコロナウイルス感染症拡大の影響をさほど受けていない。

というのも、不動産賃料の下落が起きる理由は、そのエリアに住みたい人が減る、つまり人口の減少によって賃貸物件が余り、需給バランスが崩れることで賃料が下がるからで、不動産価格が下落する理由は金融機関による融資の引き締めが起き、大量の物件が市場に売りに出されたことに由来すると過去の経験からわかっている。

例を挙げると東日本大震災の際は、原発事故による放射能の影響が東京一帯を覆っていたため、多数の外国人労働者が日本から一斉退去したのが供給>需要になった一番の要因だ。

リーマンショックの際には、銀行の融資引き締めが行われたため資金繰りに困った個人投資家や、不動産業者が物件を手放し、供給の量が増えた影響が大きい。その当時、私も築浅の良物件が格安で売りに出されていたのを覚えている。

今回の緊急事態宣言中に様子を伺った中でも、かつてのリーマンショックと震災を経験した社長は腹を括っていたのが印象的だ。

「金融機関の引き締めが一時的なものだろうから、この数ヶ月は確かに売上減が続くだろうが、じきに平常に戻るだろう。今は過渡期だね。あの放射能の騒動があった東日本大震災の時ですら、人の戻りは早かったから」。

事実、今回は世界的な感染症の流行だったため、外国人労働者が日本から減るということは少なかった。加えて、郊外や地方への人口移動はあくまで微増に留まる範囲であった。

総務省の発表によると2020年1月〜2020年12月の転入超過数は3万人と、都内の人口は純増している。昨年と比べれば増加数こそ落ちてはいるが、東京は引き続き人が増え続けていると言える。

地方の若干の転入超過数の増加は、緊急事態宣言下に東京に行き控えている引越し待ちの影響もあり、一時的な現象だと見込まれている。単身世帯が住むワンルームは、そうした郊外転居の煽りを特に受けにくい。

消費が停滞し、行き場を失った投資マネーが投下された影響で株価が日々乱高下を繰り返す中、自分が所有する物件の家賃収入だけは毎月安定していた。不動産投資はやはり手堅い。一連の騒動を目の当たりにして私はそう確信した。

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