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生き方

「挫折から幸せをつかむ人」と「挫折して病む人」の決定的な違い

加藤諦三(早稲田大学名誉教授、元ハーヴァード大学ライシャワー研究所客員研究員)

2021年10月27日 公開 2024年12月16日 更新

「挫折から幸せをつかむ人」と「挫折して病む人」の決定的な違い

人は、自分を人生の苦境に追い込むほど重荷になっている人と戦い、時には関係を断ち切って逃げ出す勇気が必要と加藤諦三氏は言う。そして同時に大切なことは、どんなに悲惨な経験をしても「必ずまた幸せになれる」と信じること――。

※本稿は、加藤諦三著『心の免疫力「先の見えない不安」に立ち向かう』(PHP新書)を一部抜粋・編集したものです。

 

心の病の人は「まず批判をする」

レジリエンスは、私にいわせると学ぶ姿勢である。レジリエンスのある人は学ぶ姿勢のある人。レジリエンスのある人は、どんな状況でも「ここから何を学べるか」を考える。

悪いことは竹の節目となって、そこから先へ新しく伸びるきっかけになるかもしれない。

レジリエンスのある人は常に対処を考える。だからレジリエンスのある人は困難な状況でも乗り越えようとするし、挫折しても立ち直ろうとする。

人生は困難に満ちている。人生に挫折は避けられない。

だから問題は対処能力である。対処能力にはいくつかの要素があるが、一つは学ぶ姿勢である。人の話を聞く姿勢である。

深刻な劣等感のある人は、どうしても学ぶ姿勢がなくなる。心が病んでくると、さらに対処能力がなくなる。

人と話していれば、そのコミュニケーションの中で対処の知恵も出てくるが、心の病の人がするのは、まず批判である。自我価値の防衛である。

心が病んでくれば病んでくるほど、回復のきっかけをつかめない。学ぶためには素直でなければならない。しかし深刻な劣等感のある人に「素直であれ」と言っても無理な話である。

素直になることほど難しいことはない。ひがんだり、すねたり、突っ張ったり、人に嫌がらせをしたり、偏見を持ったりして自分以外を責める方が、はるかに心理的には楽である。

憎しみがあったら素直にはなれない。憎しみがあったらコミュニケーションできない。同じ体験をしても、レジリエンスのある人はそこから学んで立ち直っていくし、心が病んでいる人は、さらに落ち込んでしまう。

学歴は人を救わないが、学問をすれば救われる可能性がある。なぜ自分は憎しみをもったか、それを学ぶ。

それが「悟る」こと。

人間関係のトラブルからも学ぶ。すぐに答えを出そうするから分からない。

 

「もう一度幸せになれる」自身もうつ病だったリンカーンの言葉

戦争で父親を失った娘に宛てた手紙がある。アメリカ大統領になったリンカーンの書いた手紙である。

そこに「あなたが悲しみから救われるとは思えないであろう。しかし必ずまた幸せになれる」と書かれている。

どんなに辛くても「もう一度幸せになれる」、この考え方がレジリエンスである。

なれるわけないと思うか、なれると思うか、それは個人の自由だ。「なれる」と信じるのがレジリエンスの精神である。

さまざまな徳目を実現した偉大な歴史上の人物を解説した本がある。その徳目の一つがレジリエンスであり、それを実現したのがリンカーンである。

大統領として最も困難な南北戦争の時期に彼は、「自分は事態をコントロールしているとは言えない。事件の方が自分をコントロールしている」と述べている。

それにもかかわらず、彼は成功の機会を探していた。絶望しなかった。

リンカーンは本来、メランコリーな人間であったという。慢性のうつ病に生涯悩まされていたという。しかし、現実にしっかりと向き合い、必ずそれを乗り切った。

それは先の手紙に書いてある、「必ずもう一度幸せになる」と「信じる力」であろう。

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「重荷になっている人」を断ち切る

著者紹介

加藤諦三(かとう・たいぞう)

早稲田大学名誉教授、元ハーヴァード大学ライシャワー研究所客員研究員

1938年、東京生まれ。東京大学教養学部教養学科を経て、同大学院社会学研究科修士課程を修了。1973年以来、度々、ハーヴァード大学研究員を務める。現在、早稲田大学名誉教授、日本精神衛生学会顧問、ニッポン放送系列ラジオ番組「テレフォン人生相談」は半世紀ものあいだレギュラーパーソナリティを務める。

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