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かつて使い道がなかった「ゴム」...借金まみれでも実用化に尽くした発明家

大宮理(河合塾講師)

2022年04月04日 公開

 

コールタールから生まれた防水布

製鉄業でコークスの利用が盛んになり、さらにロンドンなどの大都市に、石炭ガスを配管したガス灯が広まってきました。これらの利用拡大とともに、石炭の分解から生じる副産物である強烈な臭いの黒くてドロドロしたコールタールが大問題になりました。

コールタールは、木造の船や土木工事などの防水剤、防腐剤として利用されました。しかし、ガス灯のガス製造では連日、あまりにも大量に発生するので「悪魔の水」といわれ、業者はもて余していました。廃棄物としてあちこちの川や海に捨てられ、環境汚染の問題を引き起こしたのです。

グラスゴーで染色業を営むスコットランド人が、1823年のある日、偶然にもコールタールから得られるナフサ(石油と同じもの)がゴムを溶かすことを発見しました。この溶かしたゴムを、木綿の布2枚のあいだに塗って貼り合わせると、防水布ができることを発見して工業化します。

グラスゴーは雨が多い地方なのでうってつけの商品となり、瞬く間に売り切れました。この人物の名前はチャールズ・マッキントッシュといい、いまでも「マッキントッシュ」というレインコートなどのブランドになっています。

さらに、イギリス人の幌馬車の職人トーマス・ハンコックが、ゴムを伸ばしたり加工したりする技術を発明し、ゴムの利用の時代が訪れようとしていました。1825年には、マッキントッシュとハンコックがともにゴム事業を始めます。

しかし、ゴムが世の中を変えるには、さらに1人のゴムにとり憑かれた男が必要でした。

 

ゴムにとり憑かれた発明家

現代は、ゴムによって支えられているといっても過言ではありません。ゴムのタイヤ、長靴などの防水グッズ、化学工場から自動車まで、パイプのつなぎ目からガスや液体の漏れを防ぐガスケット(充塡材)、O型のゴムリング(Oリング)、ベルト類などの機械部品など枚挙にいとまがありません。

この実用的なゴムの製造法を発明したのは1人のアメリカ人で、まさにゴムにとり憑かれた男でした。

1830年代、アメリカではゴムを使った製品があちこちで誕生し、多くのメーカーが立ち上がりました。しかし、夏にはベトベトになり、冬には硬化してひび割れるゴム製品は評判を落とし、たくさんのゴム製造会社が倒産しました。

1834年、34歳のチャールズ・グッドイヤーは、このゴムの実用化をめざして研究にとりかかりますが、ゴムを使った試作品をつくっても、失敗する日々が続きます。

借金まみれになった彼は、子供の学校の教科書を質屋に入れるほど困窮し、債権者刑務所に何回も送られるほどでした。ゴムの靴、郵便用の袋、あらゆる商品が夏になるとベトベトになり、使い物にならなかったのです。

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新素材ゴムのブームが到来

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