不安になるべきは、部下の「成長」を止めてしまうこと
責任感がある上司ほど、マイクロマネジメントに陥りやすいものです。そこで、その責任感を「目先のこと」ではなく、「部下を成長させること」に向けてみると、マイクロマネジメントを手放しやすくなります。
「やらされた仕事」では成長ができないことは、心理学が実証しています。(※2)
「目標は未達成だったけど、上司の言う通りに電話を30件かけたのでOK」といったように、他責にしがちになるからです。そこで「自己決定感」に着目してみてください。
自己決定感とは、「自分がそれを決めた」という感覚のことを言います。この自己決定感が高いと、失敗をしても次の成長に活かすことができる、というのです。
「目標は未達成だった。こうしておけばよかったな。よし、次はこうしよう」と「反省」をし、次に活かすようになります。
星野リゾートの星野佳路社長の口ぐせは参考になります。同社の会議の光景がテレビのドキュメンタリー番組で放映されていたのですが、最も多かったセリフがこれでした。
「で、どうしますか?」
まさに自己決定感を誘発するセリフです。社員の方も、こうおっしゃっていました。「社長は、自分の手柄にしてくれる。やるしかない」と。
これからはこう考えてみてはいかがでしょう。致命的なミスでないなら、それも本人の成長の肥やしだ、と。
実際、ミスは無意味なものではなく、部下に色々な気づきを与えてくれます。言うなれば、一見するとネガティブな存在である「ミス」が、彼らの指導役にもなってくれるわけですから、ミスを逆に利用しない手はありません。
部下がミスしたら、こう言えばいいのです。
「失敗は次に活かせばいい。で、次はどうしますか?」と。
※2:エドワード・デシとリチャード・ライアンの「自己決定理論」
プレイヤー上がりのリーダーが失敗する、最大の理由
今や人事のオピニオン・リーダーの1人、サイバーエージェント取締役の曽山哲人氏に「リーダーになるにあたっての注意点」を尋ねたインタビュー記事(「ログミー」2017年4月27日)は参考になります。
「これは簡単ですよ。自分のやり方を押しつけないこと。(中略)プレイヤー上がりでリーダーになる人が失敗するのは、これが理由なんです。(中略)できるリーダーは、メンバーにやり方を考えさせる。ダメなリーダーは、自分のやり方を押しつける」
実に、本質をついた言葉ではないでしょうか。
イチロー選手が新人の頃、その打撃フォームを「基本がなっていない!」と否定し、フォームを矯正しようとしたのは、当時のオリックスの土井正三監督(V9時代の巨人の主力選手)でしたし、若かりし日のダウンタウンの漫才を見て「そんな品のないのはアカン。そんなん人様の前でやったらアカンで」と言ったのは、当時絶頂を極めていた横山やすしさんでした。
プレイヤーとして結果を出してきた人ほど美学や哲学があり、良かれと思って指摘をすることは少なくありません。でも、もし当時のイチローやダウンタウンが真面目に言いつけを守っていたらと思うと、ゾッとしませんか。きっと今の活躍はなかったはず。
自らの正解にこだわらないのはもちろん、むしろ自分を超える方法を"一緒に考えてあげられないか"と考えてみてください。
今の20代前半の若者は、たしかにミスを恐れる傾向は否めません。しかし彼らの突拍子もないアイデアには素晴らしいものがあります。生かすも殺すもリーダー次第です。