親からの承認が足りなかった人が「自己愛を自作する方法」
2022年09月06日 公開
周囲から否定されないように、完璧な自分を作り上げようとしてしまう人がいます。しかし無理をしているうちに、他人に強い恐怖心を持ってしまうことも。等身大の自分でも愛するにはどうしたらいいのでしょうか。
メディカルストレスケア飯塚クリニック院長の飯塚浩氏が「自己愛を作る方法」を紹介します。
※本稿は、飯塚浩著『小さな町の精神科の名医が教えるメンタルを強くする食習慣』(アチーブメント出版)より、内容を一部を抜粋・編集したものです。
親子関係が「自己愛」に影響する
自己愛とはその名のとおり、自分を愛することです。無条件に「あなたはすばらしい!」というメッセージをたくさんもらいながら育てられたら、「自分は自分のままでOKだ」というかなりタフな自己愛をもつことができます。
昔から子どもは「授かりもの」と言われてきました。今は小さいころから、どこどこの塾へ行って、お受験をして、このレベルの大学に入れて...と、親の人生計画の中に組み込まれている感じです。
親の計画や方針に合致した行動は褒められ、ほかは否定される。そうなると子どもは誰よりも頭がよいとか、すごく真面目でいい子とか、容姿が美しいとか、いろいろな条件を満たす自己イメージをもっていないとつらくなってしまうわけです。
ただ、そんな神童や美人に生まれついている人はほとんどいませんから、あちこちで傷つきます。周囲から否定されない自己イメージを保たないと不安になります。
それが「条件を満たさないと生きていけない」という強い不安になると「完璧でなくてはならない」「とにかく周りに認めてもらうことが最優先」といった、現実とはかけ離れたファンタジーをつくり自分を支えようとします。これは無条件での承認を受けていた子の自己愛とは似て非なるものです。
タフな自己愛を自作する方法
タフな自己愛のある子は勉強ができなくても、足がクラスでいちばん遅くても、背が低くても「自分はOK」なのです。
しかし、等身大ではいけないと思っていると、ファンタジーを危うくする他人の言動にものすごい怒りをもって対応したりしてしまうわけです。
たとえば「仕事はラクで当たり前」という考え方をもっている人に「そんな甘い考えじゃ、生きていけないぞ!」と過剰に感情的な批判をしたりします。
その一方で尊大なようで他人に強い恐れをもっている様子もうかがえます。現代人には程度の差こそあれ、同じようなところがあるのではないでしょうか。
今、背伸びをしている感覚があれば、誰の目を気にして無理をしているのか。誰のためにそれをやっているのか。立ち止まって考えてみてもらいたいのです。
わたしは患者さんにプチ非行を提案することもあります。その人が考えているスタンダードからちょっとはみ出したような行動を試してもらうのです。
まとまった有給休暇を取る。髪を明るい色に染めてみる。普段はしないような派手なメイクをしてみる。周囲の評価がちょっと変わりそうなことをやってみるのもいいと伝えます。評価が下がらなかったり、意外と褒められたりすると「今の自分でいいかもしれない」と実感します。
完璧なんていうのは、人間を幸せにはしません。周りから認められることを人生の最優先課題にし、認めてもらえない可能性のある部分は絶対露呈させないようにする。そんなことをしていたら、人といるのが苦しくなります。
自己肯定感が低いと、他人の言葉を無批判に受け入れ、振り回されてしまいます。相手を選ばず、相手の言うことをすべて自分の心の中に入れてしまうのです。
例えるなら、嫌なご近所さんだろうが、セールスマンだろうが、お構いなしに訪れてくる人全員をそのまま自宅に招き入れているようなものです。どう考えても落ち着かないでしょう。
あなたは何かしら不安でいつも焦りを感じていませんか? 誰にも何も言われないようにしないといけないと考えているのではないでしょうか?
そういう人はこれまでたびたび、自分の興味や関心、考えを否定されてきました。そして、世界の危険さを説かれ、自分の無知を蔑まれ、「そんなことでは将来やっていけないぞ!」と脅されてきました。
だから、つねに周囲に気を配り、否定されないように24時間がんばり、睡眠不足だろうが、体調不良だろうが、苦しくてもがんばるしかないと思い込んで、ラクになろうとしないのです。