頭で考えて幸せになろうとしても無理
本当は頑張って充実した人生を送った友人が羨ましい。友人に負けるのが悔しいから、理屈をこねて「私は自分の生き方に満足しています」といっている。
本当は何かに挑戦して生きている人が羨ましいのに、理屈をこねて「私の人生は充実しています」といっている。本当は権力を持った政治家が羨ましいのに、理屈をこねて「私は満足しています、権力は無意味です」といっている。
嫉妬している人は本当の自分の心の姿を見つめないで、何とか解釈だけで幸せになろうとしている。だからいつまで経っても幸せになれない。
慢性的に不満なのは、苦しみを逃げたからである。成長を拒否したからである。無意識の領域にある「安全や防衛にしがみついている」自分に気がつき、それを認めれば、人生も先が拓ける。
人はすでに持っているものを危険にさらすことを恐れる。独立、自由、分離を恐れる。独立、自由、分離への恐怖感から、生産的に生きられない。そう気がつけば、そう認めれば、生産的に生きられる。
自分が支配されているものに気がつかないから、積極的に動けない。そして偉そうにしている。偉そうにしているのは、「恐れから安全や防衛にしがみつき、退行」しているからである。
【著者紹介】加藤諦三(かとう・たいぞう)
1938年、東京生まれ。東京大学教養学部教養学科を経て、同大学院社会学研究科修士課程を修了。1973年以来、度々、ハーヴァード大学研究員を務める。現在、早稲田大学名誉教授、日本精神衛生学会顧問、ニッポン放送系列ラジオ番組「テレフォン人生相談」は半世紀ものあいだレギュラーパーソナリティを務める。