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上田竜也さんが小説に挑戦したきっかけ「グループの主題歌につながれば...」

上田竜也(歌手、俳優)

2025年07月02日 公開

上田竜也さんが小説に挑戦したきっかけ「グループの主題歌につながれば...」

6月27日に上田竜也さん初の小説『この声が届くまで』(KADOKAWA)が発売になりました。物語を書き始めたのは10年前。メンバーの脱退が続いたKAT-TUNのために、「自分にできることはないか」と考え、執筆に取りかかったといいます。しかし、事務所に相談したものの一度は中断。時を経て体制が変わったことで、再び出版に向けて動き出すことになりました。

この小説に込めた思い、そして上田さんが今、あらためて感じていることとは――。

写真:TOWA

 

KAT-TUNが3人になった時期に、独り書き始めた

物語の構想から10年。当時、KAT-TUNで3人目の脱退が決まったタイミングで、上田さんは小説の制作に着手されたそうです。全体のおよそ3分の2ほどを書き進めたところで、事務所に相談したものの執筆はいったん中断。その後、ご自身を取り巻く環境が変わったことをきっかけに、昨年から改めて発刊に向けた動きが本格化したとのこと。

「頭から中盤ぐらいまでと終わりを作っていたんですけど、去年の春くらいから、打ち合わせしながら再び作っていきました。

10年前、すでにこういう最後がいいなあというシーンは書き終わっていたので、なんとなくの話の流れはあったんですけど、そこに到達するまでと、書き終えている箇所も含め、シーンを広げていく作業というのを去年から始めました」

そもそも小説を書き始めたのは、3人となったグループの仕事を生み出すためだったと語ります。

「誰かを頼るより、自分で作っちゃったら早いなってところから、小説というよりは物語を書き始めました。それが理由だから、小説を選んだわけではないです。脚本でもなんでもストーリーを作って、それを漫画化なのか実写化なのか、形にして。それでグループの主題歌を持ってこれればと思い、そういう方法を選びました」

上田さんは、当時、ほとんど誰にも相談することなく執筆を進めたのだとか。

「基本的に決めるのは自分だから。なので人には相談しないです。作詞するときもそう。プロの方と相談することはあるかもしれないけど」

今回も物語をつくりたいと思った際に、友人にそういった方面のプロを紹介してもらおうと思い、株式会社コルクの佐渡島さんを紹介してもらったといいます。

編集者と二人三脚で作品を仕上げていくなかで、担当編集の仲山さんからかけられた印象的なひと言について伺うと、主人公・龍のキャラクターについて指摘された点には、深い気づきがあったと語りました。

「自分の中で『龍はこうでしょう』って思っていたところを、ちゃんと言語化してわかりやすく説明する必要を指摘してくださったのは、結構な気づきだった」

仲山さんによれば、制作の過程ではストイックに一気に進める場面も多く、同時に、集中力が切れたときの"止めどき"の判断も的確だったそうです。

「ある意味自己中といえば自己中。集中力が切れたらやめるけど、ここだけは(納得いくまで)やりたいって言ったり」と上田さん。良い作品を生み出そうとする強い意志が伝わってきます。

 

上田さんと主人公や物語が重なるところ

物語の序盤、バンド・zion(シオン)のメンバーであるマサが脱退します。主人公・龍が仲間を集めてバンドを結成したのは、それより10年ほど前のこと。世間から注目を浴びることもなく時間が過ぎ、将来への不安が脱退の理由として描かれています。

夢を追い続ける若者にとって、"10年"という節目は、進むべき道を再考するタイミングなのかもしれません。キャラクター設定について、上田さんは次のように語ります。

「書いていた時が30歳ぐらいだったのかな。だからそれを想定して書いていました。28,9歳でもまだ頑張ってる子たちもいるし、そういう意味では当時の自分と組み合わせて年齢を高めに設定していったかな。自分が言われてきたことを踏まえて、全くの架空で作るよりは説得力があるのかなと思いました」

"主人公の龍はほぼ自分"だと話す上田さん。不器用さや、気持ちがうまく伝わらないもどかしさに、共通する部分があるといいます。

「(龍との共通点は)言葉で表現するのが、小恥ずかしいところもあるので、実際に小説を読んでいただいて『あ~』って思ってもらった方がいいかもしれないですね。

こういうところじゃないですか。もうめんどくせえなって思っちゃうところも似ているかもしれないです。言葉で説明するより読んでくれっていう」

バンドを題材にしたことについては、ご自身のアイドル活動との共通点も少なからずあるようです。

「バンドがそもそも好きっていうのはもちろんあるんですけど。これは最初に2つ、スポーツ漫画とバンドのプロットを作っていたんですよ。編集の方からアドバイスを頂いた際に、バンドの話の方が、続きが気になると言っていただいたので、方向を決めました。

実際に書き出してみて、やっぱり自分の環境と似ていて、こちら側の人間しか知らないこともあると思うので、それが説得力になっていると思います。だからスポーツ漫画よりも良かったかなと思います」

執筆の中では、苦労したシーンも多かったそうですが、特に思い入れがあるのが、龍とヒロトによる花火大会での対決の場面だと語ります。

「意外なところで言うと、ヒロトと龍の花火大会の対決、特に金魚すくいのシーンが時間がかかったんですよ。どうしたら頭の中にある表現がうまく伝わるか、どうしたらこの動きをスローモーションっぽく読んでもらえるかな、ヒロトの形相をどうやったら想像してもらえるかなとか。

やっぱり漫画だとすぐわかる。でも文章なのでなかなか難しい。ちょっと『カイジ』っぽさをイメージしてみたりとか。あそこはすごい苦労しましたね。

ずっと漫画を読んできていて、ギャグ漫画も読んでいたので、ギャグをどうしても言いたくなっちゃうんだけど、そこに小説との差を感じたこともありました。これは現実じゃ起きないよねとか、本当にやったら暴行罪になっちゃうなとか。そういうのと闘って、いい落としどころを見つけて書いていきました」

そのほか印象的なシーンとして、龍がはじめて他人を頼る瞬間についても印象深く語ってくれました。自分と仲間だけを信じて生きてきた龍が、外部から加入した鶴岡に「俺たちを輝かせろ」と託すシーン。どのような描かれ方をしているのか、気になったらぜひ小説を手に取ってみてはいかがでしょうか。

著者紹介

上田竜也(うえだ・たつや)

歌手、俳優

1983年生まれ、神奈川県出身。2006年KAT-TUNとしてデビュー。2025年3月末にグループを解散。
現在は、個人として俳優や音楽活動など自分だけのスタイルでエンターテインメントに取り組んでいる。

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