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「ジジイ文化」「意味不明な上司」を嘆いていた若者も、けっきょくは同化してしまう理由

2018年05月01日 公開

河合薫(健康社会学者)


 

本音が出た一言

私はこれまで講演会や取材で、いろいろな企業を訪れる機会に恵まれてきました。
10人ほどの小さな企業から何千人もの従業員を抱える大企業まで、業種は電気、車、サービス、運輸、繊維などなど、多岐にわたっています。
また、10年以上行なっているフィールドワークのインタビューで600人以上のビジネスパーソンにご協力いただき、コラム執筆や研究に生かしてきました。
そして気がついたのは、“リーダーは意味不明なことをする”というパターンの多さです。
リーダーたちは例外なく「現状を打破したい!」「職場を変えたい!」「部下の能力を引き出したい!」と願っている。ところが、職場には「意味不明」が蔓延し、部下たちは、「なんでこんな意味不明なことばかりなんだ!」とうっぷんを溜め込んでいます。

例えばこんなことがありました。
ある企業に、講演会で呼ばれたときのこと。その日もいつものように控え室で、講演会運営の責任者とその上司から、職場の状況を探っていました。
探るだなんて、なんだか悪いことをやっているみたいですが、私にとってこの時間は、現場の生の声が聞ける貴重な時間です。そこにいる社員同士の何気ないやり取りの中に、その会社の雰囲気や上司と部下の関係の“素”を探ろうと試みます。

話を始めて10分ほどたった頃でしょうか、ドアをノックする音とほぼ同時に、ドアが開き、社長さんが入ってきました。
堂々とした面持ちの社長さんは、
「本日はお忙しい中、遠くまでご足労いただきありがとうございます」
と会釈し、名刺を差し出します。
「お忙しい中……」「遠くまで……」─。この2つのワードは、全く私が忙しくなく、ちっとも遠くないときでも、企業の偉い方が使う常套句です。面白いことに「遠くまで」と言いながら、話の途中で「今日はどちらからですか?」と聞かれることがあるので、いかに形式的なあいさつなのかがわかります。

このときの講演会のテーマは、私がよく依頼をいただく「上司部下関係」です。ただ、「女性活用についても盛り込んでほしい」というオーダーも事前にありましたので、社長さんもいかに自分たちが精力的に取り組んでいるかをアピールしたかったのでしょう。ソファーの真ん中にドンと座ると、女性活用やダイバーシティについて大いに語り始めました。
「私はね、常々これからは女の時代だって、部下たちに言い聞かせてるんです。
女性の方が優秀だし、男たちはめっきり弱くなっちゃいましたからね。結婚式に行ったって、新郎の方がワンワン泣くんだもんね。困っちゃうよね(笑)。
何でうちの会社には女性の役員がいないのかね。私は、女性を積極的に登用しなさいって、散々言ってきたつもりだけどねえ」
社長さんにこう問いただされた社員さんたちは、一様に眉間にシワをよせ、「申し訳ない」という表情を浮かべていました。

ところが、です。
その後、講演会場に向かうエレベーターで、社長さんは信じられない一言を言い放ちます。一緒に乗り合わせた女性社員が先に降りたときに、こう言ったのです。
「あれはうちの社員か? 女は3歩下がってついてくる、って言葉を知らんのかね」
さて、この企業になぜ女性役員が誕生しないかわかりますね。ウソのようなホントの話。

これが今の日本の現実です。恐るべしです。
女性である私がこういったことを書くと、「なんだよ、また女性差別だのなんだの文句かよ」と反射的に思う方もいらっしゃるかもしれないので、他の例も紹介しておきます。

これまた講演会前の控え室の出来事です。
講演会の進行の打ち合わせ中に、配布資料にミスがあることが判明しました。
するとそこにいた上司(=部長さん)は、「おい、これ困るなぁ。こんなのを私が作らせたと思われたら、笑いもんだぞ。責任者のところからオレの名前を消してほしいなぁ」とボヤきました。
それまで散々、「河合さん、いつもの感じでズバッと若い管理職を叱咤激励してやってください。もっと当事者意識をもってほしいんです。よろしくお願いしますよ」と話していたのに……。
残念なことです。
こうした残念な上司をもつ部下は、ホントに気の毒です。

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