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金沢から東京・銀座へ カリスマ創業者の後を受け成長する「ぶどうの木」

本康之輔(株式会社ぶどうの木代表)

2018年11月28日 公開 2022年02月17日 更新

サービス業では無理に時間を削れない

ぶどうの木

(本)そして約束の3年が過ぎ、父から「帰ってくるか」といわれ、金沢に戻ります。ただポストは用意されておらず、社長である父から「何をする?」と聞かれました。即座に答えたのは「経営管理をします」ということ。「ぶどうの木」ではアメーバ経営を導入しながら、経営管理課がなかったからです。

まずは経営管理課として、採算表の整理から始めました。当時は経費の締めのルールもアバウトだった。「最終日は月末」のはずなのに、「これ先月の分です」と翌月初にレシートの突っ込みがあったり、売掛金も「昨日立っていたんです」と、月をまたいで申請が来るなどの状況でした。そこで、締日と運用に関して、細かなルールをきちんと決めました。

それまでは、「今月は少し余裕があるから、来月に回そう」「余裕がないから、来月の分だけど先に上げておけ」ということをしていたようです。それがだめになったので、社員はやりづらくなったでしょう。しかし、それを許していたら、アメーバ経営をする意味もないので、意識的に正していきました。

――「仕組み」づくりから始めたのですね。さらにKCCSで学んだことをどう生かしましたか?

(本)「時間当たり採算」について、サービス業における運用の仕方を考えました。製造業では「決まった生産を、いかに短時間でローコストでつくるか」と考えて「時間当たり採算」を上げるのは当然です。ところが、サービス業では簡単に時間のコントロールが効かない。

たとえば、ショッピングセンターのテナントとして入っているお店は、ショッピングセンターの営業時間に合わせて、お客さんがゼロだとしても閉店の23時まで開けなければならない。開店時間が9時なら、それに従うしかない。そもそも「時間を削る」こと自体が難しいのです。

にもかかわらず、当時わが社では、「時間当たり採算」を上げるために営業時間や労働時間を無理に削るよう意識していました。ぶどう園にある本店では、少しでも早く閉店しようとして、照明をあえて暗くし、お客さんが来ないようにしていた。また洋菓子の製造部門では、仕事の途中でも「時間を削る」ために切り上げていた。リーダーの号令一下、部下は仕事をやめて帰途に就く。しかし駐車場の自分の車で身をひそめ、リーダーが帰ったら、車から出てきて工場に戻り、残りの仕事を始める。そんなことまでしていたのです。このような、アメーバ経営の理解度が低かったところにメスを入れていきました。

――「時間を削る」ことをメインにしないのであれば、あとは差引収益をどう上げるかになりますね。この点、どう工夫されたのですか?

(本)レストランの場合は営業時間に対して「空席率」をどう落とすかが重要です。4人掛けのテーブルで、2人で座るのか、3人、4人で座るのか。「空席や空席時間をいかに少なくするか」を考えねばなりません。さらに大切なのが「アイドルタイムで、何を売って、どんなサービスをして席を埋めるか」です。席を埋めなければ売上にならないわけです。10席しかない店なら、できるだけそれを有効に使わなければならない。席が空いている時間を少なくしていく施策を、必死に考えねばならないのです。

「時間帯ごとのメニュー替え」「アイドルタイムの商品開発」「テーブル下にかごを用意し荷物で席を塞ぐことのないようにする」「中間バッシング(下膳)を徹底しリセットスピードを上げる」など、売上を最大にする取り組みを行いました。

さらに製造部門の施策についても、「各販売チャンネルのバックヤード部門として物流部を設け集中購買を行う」「機械化による時間削減」「商品ごとのチーム化により単一生産化」など、効率を上げることで「時間当たり採算」を伸ばす取り組みにチャレンジしてきました。

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もう一度、お客さまになって頂くために……

著者紹介

本康之輔(もとこうのすけ)

株式会社ぶどうの木代表

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