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金沢から東京・銀座へ カリスマ創業者の後を受け成長する「ぶどうの木」

本康之輔(株式会社ぶどうの木代表)

2018年11月28日 公開 2022年02月17日 更新

もう一度、お客さまになって頂くために……

金かすてら

――このような、KCCSでの学びを導入するに当たり、社長であるお父様といろいろ話しながらなさったのですか?

(本)父は、方向は示すのですが、「これをしろ、あれをしろ」と具体的にはいわなかったですね。自分で何をしたいか、何をしなきゃいけないかを、判断しながらやっていった感じです。そしていまから10年前、私は「盛和塾」に入塾したのをきっかけに、専務になりました。そこからの10年というのは、後継者としての勉強をしつつ、父から私への引き継ぎ期間だったと思います。

専務になってから私は、「いつ社長を引き継いでもいい」つもりで仕事に取り組んできました。最終判断者のつもりで、経営にかかわっていましたね。とくにお客さまからのクレーム対応について、私のところまで回ってきたクレームは、どんな内容であっても必ず何らかの解決をしました。「社長を出せ」といわれてもあえて上にはあげず、きちんと納得して頂くまで、私が対応していったのです。

――クレーム対応の最終責任者を引き受けることで、経営者としての腹を固められたわけですね。

(本)そのクレーム対応に関して、忘れられないエピソードがあります。ある年のちょうどクリスマスイブの12月24日、大雪の晩に、私はお詫びのケーキを1つ、届けに行っていました。そこへ部下から電話が入ります。「クレームをさらにクレームにしてしまいました。申し訳ございません」と。

理由を聞くと、お客さまが苺に「白いモノ」がついているのを指差し、「これ、カビですよね」といわれた。これに対してその部下は「カビかどうか、私には判断できません。検査機関に出して、その答えをもってお伝えします」と答えた。それにお客さまは怒ってしまわれたとのことです。

その日はもう夜が遅いので、次の日の朝、今度は私がお客さまの元へ伺います。やはりお客さまは、「これ、カビですよね」と繰り返される。そこで私は、「お客さまのおっしゃるとおりだと思います。食べられない商品をお届けして、誠に申し訳ございませんでした」と深くお詫びしました。

お客さまは「これ、食べられないですよね」とおっしゃりたかったのです。そして、お客様の知識の限りにおいて「白いもの=カビ」と表現されたにすぎない。そのニュアンスをくみ取れないということは、お客さまに対する共感能力に乏しいということです。また、ほんとうに解決すべきことは何かを見極める眼、それを実現させようとする力が不十分であったともいえましょう。

トラブルを表面的に収めようとしたり、その根本原因を考えず、マニュアル風の説明に終始したら、二度とお客さまとして戻ってきて頂けません。クレームの本質を把握し、きちんと対応することで、もう一度、お客さまになって頂く。それが重要なのです。

――お客さまに共感したり、物事の本質を見極められるようになるためには、常日ごろから「人としての正しい生き方、考え方」を勉強し、人間力を高める努力をしていかねばならないように思います。フィロソフィの教育を、御社ではどうされてきたのですか?

(本)月に1回、2時間の勉強会を開き、社員に出席して貰っています。弊社の『フィロソフィ手帳』を教材にしながら、そこから何項目かを抜き出し、社員が所見を書いたレポートを皆の前で発表し、意見交換する。さらに私の解釈と相違がないかどうかを、刷り合わせます。そこでは、先に述べたような、私自身のKCCSや「ぶどうの木」に戻ってからの経験などを、具体的にわかりやすく絡めながら、社員みんなに理解して貰おうとしていますね。

じつはKCCSでの営業時代、私は最初、本家本元の京セラの『フィロソフィ手帳』の内容を否定的にとらえていました。しかし仕事を始めて5、6か月経ってもなかなか業績を上げられないなか、『フィロソフィ手帳』に書いてあることを全部、「正しいと思って読み、実行しよう」と腹を括りました。

そうすると驚くべきことに、これまで課の平均の数字を下回っていた数字が、超えるようになるんです。「3,500円を取れ」といわれていたのに対し、良いときには6,500円ぐらいまで行き、課の数字を引っ張れるぐらいになったのです。こんな経験についても具体的に、わが社のフィロソフィの勉強会のときに話します。

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「急ハンドル」しないように意識するしかない

著者紹介

本康之輔(もとこうのすけ)

株式会社ぶどうの木代表

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