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社会

実は"識字率"が低下している? フェイクニュースを見抜けない日本人

一田和樹(作家、元IT企業役員)

2018年11月27日 公開 2023年02月24日 更新

検証記事を理解できない人が増えている?

2018年2月2日に発売された『AIvs. 教科書が読めない子どもたち』(新井紀子、東洋経済新報社)では、基本的な文章読解力が欠落した人々がいることが具体的な調査や事例とともに紹介されている。機能的識字能力の欠如と言ってもよいだろう。

教科書レベルの文章の意図を把握できない人間が、ファクトチェック記事を正しく理解できるとは考えにくい。

これに対してフェイクニュースは感情的な反応を引き出すように書かれていることが多い。中にはビジュアルでほとんど伝えているものもある。ほとんどの人が内容を理解することができる。

『AIvs. 教科書が読めない子どもたち』では、中高生の読解力テストを通じてそれが危機的状況にあることを指摘し、他の世代と比較して中高生が特別低いレベルとは考えられないことから全世代共通の問題である可能性に言及している。

また、OECDの学生を対象とした学習到達度調査の読解力部門で日本人が過去3回トップ10に入っていることから、世界的にレベルが低いことも考えられるとしている(日本は移民が少ないなど特殊な条件はあるものの)。

著者の新井紀子は2011年に日本数学会の教育委員長として、全国の大学生6,000人に対して大学生数学基本調査を実施した。この調査は数学そのものではなく、大学の教科書を読んで理解できるかどうかを調べたものだった。偏差値が特別高い国立大学以外では正解が少なく、深刻な誤答も少なくなかった。

この結果を深刻に受け止めた新井紀子は新たにリーディングスキルテスト(RST)を開発し、基礎的読解力調査を開始した。テストの結果は暗澹たるものだった。この本には問題と解説も多数載っているので関心のある方はご自身で試してみることをおすすめする。累計25,000人のデータを収集し、現在も継続中だという。

この本を読む限りでは、複雑なフェイクニュースの検証記事を理解できる人が多数を占めるとは考えにくい。

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