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「大企業で年収1200万円」のプライドを捨てられなかった50歳の末路



2019年03月01日 公開

江上治

それでも忠告を聞かずに退職してしまったワケ

しばらくして、「会社を辞めた」という電話があった。

「なんで辞めた。なんかおかしいだろう。理由があるだろう」

私が尋ねると、彼は初めて話してくれた。

じつは会社の飲み会のあと、酔っぱらって自転車の女の子とぶつかってケガをさせた、というのだ。私が入社したバブルの時代であれば、これぐらいのことで会社から責められることは、ほとんどなかった。

だがY君は堅実だけがとりえの男で、しかも中間管理職の50歳。聞けば部長は10歳も若い人間で、彼から「金融機関の人間が、酒で問題を起こすとは何事だ」と、そうとうきつく怒られた。それが頭にきて、会社を辞めたらしい。

人生失敗するときは、客観的に自分を見られなくなったときで、「酒、女、バクチ」とだいたい相場が決まっている。

Y君も客観的に自分の市場価値を読めば、会社を辞めても年収1200万円の価値を生み出せるのかどうか、わかったはずだ。しかも高校生と大学生の子供が2人いて、奥さんは専業主婦だ。

とはいえ、もう辞めてしまったのだから、仕方がない。私なりにアドバイスした。

「年収がかりに半分でも、拾ってもらったらありがたいと思え。いまの年収を基準にするのでなく、ゼロからやりなおすつもりで、要はタダでもいいから働くつもりで就職先を探せ」

だが彼に言わせると、「それは無理だ」という。エリートサラリーマンにありがちな話で、子供を私立のいい学校に通わせているから、教育費がバカほどかかる。家を買ったときのローンも残っている。いまの年収を維持しないと、食えないというのだ。

だから最初に辞めるなと言ったのだが、もはや後の祭りだ。「何とか探してみる」と彼は言った。

結局彼は、私の話をここでも聞かなかった。
 

20社以上の面接に落ち続けた末に選んだ仕事

彼から3回目の電話がかかってきた。面接二十数社、全部落ちた。「そもそも求人がない」と。「江上の会社で雇ってくれ」と、また同じことを言ってきた。

「お前なんか、ゼロ円でも雇わない。そもそも企業文化が違うだろう」

冷たいと思ったがそう断り、さらに彼のためを思い、もう1回言った。

「いきなりお金の話をするな。それは前の会社での君の価値だ。君の価値は、新卒で入ってから二十数年間、会社に貢献してきた。その貢献料も含めた年収1200万円だ。

まったくのゼロから新しい会社で1200万円もらいたいなら、具体的にどういう貢献をするのか言えなければならない。最低2000万円以上の貢献をするぐらいのプレゼンをしないと、絶対、君に就職はない」

そんな話をすると、そこで電話が切れた。

4回目の電話がかかってきた。彼が選んだ仕事は、なんとフルコミッション(完全歩合給)の保険の仕事だった。「もしかしたら、いま以上に稼げるかもしれない」と言われてリクルートされたらしい。

私は彼に言った。
「あのね、Y君。君みたいな安定思考の人間が、フルコミッションでゼロから自営業者のような働き方なんて絶対できない。お金じゃない。お金で仕事を選ぶな」

とはいえ、決めてしまったものは仕方ないので、「頑張ってみろよ」で終わった。

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