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社会

「基本が大事!」と口にする指導者が返答に詰まった“ある質問”

緒方良(日本バレーボール協会 指導普及委員会 副委員長/三晃金属工業 取締役)&真田幸光(愛知淑徳大学教授)

2020年09月19日 公開 2022年07月08日 更新

「基本が大事!」と口にする指導者が返答に詰まった“ある質問”

新日本製鐵(現日本製鉄)、そしてナショナルチームでバレーボール選手として活躍した緒方良氏。新日本製鐵の、主将、コーチ、監督を歴任し、現在は企業の役員をつとめ、また(公財)日本バレーボール協会で指導者の育成にもたずさわっている。

緒方氏と、国際金融論の専門家である真田幸光氏に親交があり、その縁から実現した真田幸光オンラインサロン「経済新聞が伝えない世界情勢の深相~真田が現代の戦国絵図を読む~」での二人の対談。本記事では、その対談の中で語られた選手を育成する指導者に求められる力について、その一部を紹介する。

※本記事は真田幸光オンラインサロン「経済新聞が伝えない世界情勢の深相~真田が現代の戦国絵図を読む~」内で公開された内容より一部を抜粋・編集したものです。

 

「基本が大事!」と声高に叫ぶだけの指導者に欠けている視点

現在、日本バレーボール協会で指導者の育成にたずさわっています。

指導者の育成と一言でいっても、これから指導者を目指して一般の初心者を教えていこうという人から、ナショナルチームや国際試合に出るレベルの選手を指導するトップコーチの育成までレベルは様々です。

これから指導者を目指していく人には、そもそも「指導とは何か」ということや指導で大事なことを、どのように伝えていくのか。

またトップコーチの講習会では、グループディスカッションをする際に、バレーボールの動作知識を持った人と持っていない人がプレーの基本技術・技能・戦術を話し合っても効果を薄くなってしまうこと。

指導者に、正しい動作やそれを獲得するための「正しい言葉」「伝わる言葉」でどのように指導現場にアプローチしてもらうか。などなど、次世代の指導者を育成していく立場である我々も試行錯誤し、日進月歩の情報を取り入れ勉強しなければならないことを実感する日々です。

最近、指導者の育成をしていて少し気になることがあります。それは「基本が大事」ということを口にする指導者についてです。

たしかに「基本が大事」ということは、そのとおりだと思います。

しかし、では「基本って何ですか?」と問うと、「基本とは、こういうことです」ときちんと説明できる指導者が少ない。「基本が大事」という言葉で思考停止していて、ではそれを具体的にどのように練習に落とし込んでいくかということにまで、意識をむけることができていないのです。

基本を指導するには、指導者自身が「動作の始まりがどこにあって、動作の終わりがどこか」「どこをチェックするか」を理解していなければなりません。

その理解があって、初めて「反復練習」が成立します。基本動作の習得には、反復練習が不可欠で、TOPプレーヤーほど自らが習得したその基本動作のチェックに余念がありません。

私は野球について素人ですが、たとえば、キャッチボールのような基本について「キャッチボールは始まりの動作がどこで、どの動作をチェックして、終わりがどこにあるのか」をしっかり理解して指導することが大事なのではないでしょうか。

その上で「野球の基本だから大事だよ」「キャッチボールはこうするんだよ」ということを指導できるのではないでしょうか。

ところが多くの指導者が「基本が大事」ということを言うだけで終わってしまう。選手は、「基本は大事なのはわかっているが、どうすればできるようになるのか?」を教えてほしいのです。

TOPプレーヤーを育てた立派な指導者は、「回数をやれば自然に身につく」ということを一言で言う方がおられます。実は、その裏にはご自身が「動作の始まり、チェックポイント」を十分に理解した上で、その動作を反復練習させることで基本動作を習得させたはずです。

この指導者としての「基本知識」がなく、「回数をやれば自然に身につく」の上辺の言葉だけ使って選手に間違った反復練習させていると、間違った動作を身につけ、やがて選手はプレーすることの楽しみが半減していくのではないかと思っています。

ここに問題があるのかもしれないな、と感じています。

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反復練習には「始まり」と「終わり」がある

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