コロナ禍で買い占めに動いた人の心理...「先の見えない不安」の手放し方
2022年06月20日 公開
いま、多くの人が先の見えない不安に悩んでいます。時には、なかなか悩みを解消できないことも。心理カウンセラーの山根洋士さんによれば、それは、メンタルノイズ(無意識に表れる心・考え方のクセ)のせいだと指摘します。悩み、そして漠然とした不安を解消する方法をご紹介します。
※本稿は、山根洋士著『「自己肯定感低めの人」が、一生お金に困らない方法』(PHP研究所)より内容を一部抜粋・編集したものです。
「感じる必要のない不安」の解消法
心理療法では、「底打ち体験」というものを重視します。
人はよく、「もしリストラされたらどうしよう」「ずっと独身だったらどうしよう」などと先のことを思って不安になりますが、その不安は自分の想像に過ぎません。そうなることが決まったわけではないことであり、感じる必要がない不安なのです。これを「予期不安」と言います。
逆に感じる必要がある不安もあって、例えばビルの屋上から飛び降りたら死ぬだろうな、とか、駅のホームに落ちたらひかれて死ぬな、などがそれに当たります。そう思って不安になるのは、人間として自然な反応です。
同じように、コロナ禍のような未曽有の事態になれば、この先どうなるかわからない、と不安になるのも自然な反応です。
でも、どんなに信頼できそうなデータを見ても、いつ終息するのか、この世の誰にもわかりませんよね。そのことに気づけたら、そんな誰にもわからないことを不安に思う必要はあるのか? と自問してみてください。
今たしかに不安を感じているけれど、これ以上不安になる意味はある? 不安になりすぎて、なにかいいことあるんだっけ? と。そう自問すると、「必要な不安」と「不必要な不安=予期不安」の区別がつきます。
同時に、不必要な予期不安に対して「ま、不安になったところでしょうがないか」と、フッと笑って見切りを付けられるでしょう。そのフッと笑えるのが底打ち体験で、不必要な予期不安が消えて、必要な不安だけが残ります。
このとき、必要な不安まで、勢い任せに手放そうとしないでください。それは不安から逃げているだけで、コロナなんて怖くない、今こそ遊ぼう、といった意味不明な思考・行動に走りがちになります。
そうしたアクションは不安な気持ちを抑圧して、頑張って大丈夫なフリをしているだけに過ぎません。頑張れば頑張るほど、不安は大きくなっていきます。その結果、反動が来て、ドーンと落ち込むことになります。
不安の波が来たら、一歩引いた視点を持つ
もし大きな不安に飲み込まれそうになったら、自分の心の中を一歩引いた視線で見つめて、これは必要な不安か? 不必要な予期不安じゃないか? と仕分けてみてください。
何がそんなに不安なのか? どうして不安に思うのか? ということをノートに書き出すのも、気持ちの整理をつけやすい方法です。
必要か不必要かの線引きは、人それぞれで異なります。例えば、コロナ禍になった当初、一種のパニック状態に陥って、カップ麺やレトルト食品などの保存食を買い占める行動に走る人たちがいました。災害時と違ってライフラインが止まるわけではないのに、です。
日ごろ自炊をしている人たちであれば、野菜や肉などの生鮮食品が購入できれば困ることはないはずです。にもかかわらず、カップ麺やレトルト食品を買い込むのは、不必要な予期不安から来る行動です。「みんなが買っているから買う」という状態で、完全に周囲に流されてしまっています。
逆に、いつもカップ麺やレトルト食品を食べている自炊しない人たちにとって、飲食店の休業期間中に、それらの食品がなくなるのは大きな問題です。
そういう人たちがまとめ買いをするのは、必要な不安から来る行動と言えます。そうやって、一歩引いた視点で見ると、冷静さを失わずに行動しやすくなります。